神戸新聞社説: ハーグ条約/子どもの利益守る制度に

国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約への加盟が、今国会で承認される見通しとなった。

自民、公明両党が、条約の承認案と関連法案を了承した。民主党も賛成するとみられる。訪米中の安倍晋三首相がオバマ米大統領との会談で、加盟への準備を進めていることを伝えるという。

ハーグ条約は、一方の親が無断で国外に連れ出した16歳未満の子どもを元の居住国に戻し、誰が面倒を見るかを決める国際協力の仕組みや、親子の面会交流のためのルールなどを定めている。

1980年に発効し、欧米を中心に89カ国が締結している。主要8カ国(G8)で未加盟は日本だけで、欧米諸国から加盟を強く求められていた。

離婚は家庭内暴力(DV)が原因の場合もある。日本人の親や子が外国人配偶者の暴力にさらされたり、孤立したりしないよう、相談や弁護士の紹介などの支援体制を整える必要がある。

日本人の国際結婚は80年代の終わりから急増し、2005年には4万件を超えた。一方で離婚も増え、年間2万件前後に上っている。

配偶者の同意なしに子を母国に連れ出し、面会させない「連れ去り」が問題になっている。日本がハーグ条約を締結していないのを理由に、離婚した日本人が子を同伴しての一時帰国を認められないなどのトラブルも起きている。

条約の締結で、連れ去られた子の返還や、親子の面会のための手続きで相手国の協力を得られる意義は小さくない。

民主党政権も昨春、条約の承認案などを国会に提出したが、衆院解散で廃案となった。承認の遅れは、DVや虐待に遭う母子の保護対策が不十分などとする慎重論が根強いことが背景にある。

離婚後の親権を一方の親に認める「単独親権」を採用する日本に対し、欧米諸国の多くは離婚後も両親が養育に責任を持つ「共同親権」である。それはハーグ条約にも反映されている。

条約は「子が心身に害悪を受ける重大な危険」があれば、子の返還を拒否できるとしているが、DVや虐待の恐れ、養育できない事情が認められれば、返還を拒めるよう関連法に明記すべきだ。

11年前