南日本新聞:[ハーグ条約] 子どもの利益最優先に

[ハーグ条約] 子どもの利益最優先に

 国際結婚が破綻した夫婦間で子どもの奪い合いが起きた際のルールを定めた「ハーグ条約」の承認案と関連法案について、自民、公明両党が合意した。民主党も賛成すると見られ、今国会中の承認を目指す方針も確認した。

ハーグ条約への加盟は、米国が強く求めており、与党は安倍晋三首相の訪米をにらんで了承手続きを急いでいた。首相はオバマ米大統領との会談で、加盟見通しをアピールする意向だ。

国際結婚が珍しくなくなるなかで、親権をめぐる争いを国際ルールで処理する条約への加盟は避けられない選択だ。ただ、日本では外国人の元夫の家庭内暴力 (DV)から逃れるため、子どもを連れ出さざるを得ないと訴える母親は多い。子どもの利益を最優先する関連法の整備が重要となる。

ハーグ条約は、一方の親が無断で16歳未満の子どもを海外に連れ出し、もう一方の親が会えなくなる事態に対処する条約だ。返還を求められた加盟国は子ど もの所在を調べ、原則として元住んでいた国に戻す義務を負う。1983年に発効し、欧米を中心に89カ国が加盟しているが、主要国(G8)首脳会議のメン バーでは、日本だけが未加盟だった。

加盟が遅れたのは、子どもを日本に連れ帰るケースが圧倒的に多く、メリットが少なかったからだ。しかし、未加盟のままでは日本から子どもを連れ出された 場合に返還を請求できない。さらに、日本に子どもを連れ帰った母親が米国で訴追されるケースが増えていることなどから、早期の国内法整備を求める声が出て いた。

米国などの求めに応じて野田前政権は加盟を決断し昨年3月、子どもが暴力を受ける恐れがある場合には返還を拒否できるなどの規定を盛り込んだ関連法案と承認案を国会に提出した。しかし、消費税増税をめぐる政局の影響で審議が進まず、11月の衆院解散で廃案となった。

安倍政権は3月中旬に関連法案と承認案を再提出する方針だ。民主党政権時代に一度提出された法案であり、民主党としては反対しにくいだろうが、子どもの返還を拒否できる仕組みが十分に整っているか、十分な審議が必要なことはいうまでもない。

法案が成立し、条約に加盟した際の政府の役割も重要だ。例えば、日本から米国に子どもが連れ戻された場合、日本人の母親が米国で法的措置を講じようとし ても言葉や資金などの面で困難を伴うことが予想される。在外公館が邦人保護の観点から十分な支援ができるよう取り組む必要がある。

11年前