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(24時間7分前に更新) |
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-02-25_45731
日米の懸案事項になっていた「ハーグ条約」について、安倍晋三首相は22日の日米首脳会談で早期に加盟する意向を伝えた。
ハーグ条約は、離婚や別居など国際結婚が破綻した夫婦の一方が無断で子どもを自分の国に連れ帰り、もう一方の親が会えなくなる問題に対処するための取り決めである。
条約は、返還を求められた国が子どもの居場所を調べ、原則としてこれまで住んでいた国に戻す義務を負う。その上で、どちらの親が子どもの世話をするか判断しようというものだ。
1983年に発効し、欧米を中心に89カ国が加盟。主要国(G8)で加わっていないのは日本だけである。
国際結婚が増える中、国際協力の仕組みの中で問題を解決する意義は大きい。しかし日本が締結をためらってきたのには、それなりの理由がある。
日本の場合、母親による連れ帰りが多数を占めるという。パートナーの家庭内暴力(DV)から逃れるため、あるいは生活に貧窮し、子どもを連れて実家へ戻る事例だ。
条約は「子の心身に重大な危険がある場合」は返還を拒否できると例外規定を設ける。昨年、民主党政権が提出した国内法案は「子どもや配偶者が虐待やDVを受ける恐れがある場合」も返還を拒否できるとしている。
ただ、家庭という閉ざされた空間で、さらに遠い外国で起こった暴力を客観的に証明するのは容易ではない。
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条約加盟とDV対策は、本来別々の問題である。しかし子どもの連れ帰りをめぐって見えてきたのは、言葉や習慣、法制度の違いから行政や司法のサポートを受けられず、孤立する日本人女性の姿だ。
米兵と結婚した県出身女性が米国で親権を争った裁判では、経済力や言葉の問題が壁となり敗訴するケースがあった。県内の相談機関には違法と知りつつDVから逃れるため子どもと一緒に帰国した女性の声も寄せられている。
家族や友達のいない外国で離婚や親権をめぐる問題にどこまで立ち向かえるか。安定した仕事と収入がなければ弁護士費用も支払えず、裁判で不利な立場に立たされる。
外務省はDV被害や離婚、親権問題で悩む邦人女性のための相談窓口開設など取り組みを進めている。女性の人権を守るには、その中心的役割を担う大使館や総領事館の手厚い支援が重要となる。
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ハーグ条約は、親子が面会交流できる機会を得られるよう締約国が支援することも定める。条約の精神を生かすのであれば、国内の同様な問題にも目を向けてほしい。
日本では離婚の際、どちらか一方が親権を得て、子どもを引き取る。別れた親と定期的に交流するケースはまだまだ一般的とはいえず、養育費の取り決めも進まない。
ダブルスタンダード(二重基準)とならないためにも、この機会に国内の離婚にあたっても、父母それぞれと面会交流する権利、養育費の支払いなどを、子どもの立場に立って改善していくべきだ。