【政治】
ハーグ条約 どんな条約 どう変わる
国際結婚が破綻した夫婦の一方が、子どもを国外に連れ去った場合の関係国のルールを定めたハーグ条約に、日本が加盟する方向となった。自民、公明 両党が条約を承認する方針を決め、安倍晋三首相が日米首脳会談で早期に加盟する方針を伝えた。ハーグ条約とは。加盟に向けた課題は。
(大杉はるか)
◆原則元の国に戻す
国際結婚と離婚の増加に伴い、一方の親が承諾なしに子どもを連れ去ってしまうケースが増えた。そこで子どもの立場を最優先に、子どもの返還や国境を越えた親子の面会ルールを定めたのが、この条約だ。
二月現在、八十九カ国が加盟し主要国(G8)の中で日本だけ未加盟。背景には、親権に関する考え方の違いがある。
欧米では別れても両親に親権を与える「共同親権」が常識。一方、日本では民法上、親権は離婚した夫婦の一方にしか与えられない。子どもを手放したら二度と会えないのではないかという考え方が強い。これが未加盟だった理由の一つといわれている。
加盟するには国会での条約の批准と関連法案の成立が必要だが、自公両党の承認方針によって今国会で実現する方向になった。
◆相談体制の充実課題
これまで未加盟国の日本に一方の親が子どもを連れ帰れば、もう一方の親は泣き寝入りせざるを得なかったが、こうしたケースが解消される。
例えば、父親の承諾なしに、母親が子どもを日本に連れ帰った場合、外国にいる父親から返還要求があれば、外務省は居場所を調べ返還に向けた手続きに入る。子どもは連れ去られる前に住んでいた国に戻した方が望ましいというのが、ハーグ条約の考え方だ。
裁判で決めることもできる。日本に子どもを連れ去られた場合、外国にいる親が日本の家庭裁判所(東京か大阪)に申し立てる。ただし、子どもが十六 歳未満であることが前提。(1)連れ去られてから一年以上経過(2)連れ去りの前から申立人が養育放棄していた(3)返還すれば、子どもに危険が及ぶ (4)子どもが拒んでいる-という場合は、裁判所は子どもを返さない。
両親の話し合いや和解で解決してもいい。この問題に取り組んできた自民党の馳浩衆院議員は「まずは相談体制を充実させることが重要だ」と言っている。
夫の家庭内暴力から逃げて「シェルター」に身を隠し、居場所を特定されたくないと考える親もいる。その場合は、本人ではなく、地方自治体にある配偶者暴力相談支援センターを窓口にすることも検討されている。