日経:ハーグ条約加盟へ備え急げ

ハーグ条約加盟へ備え急げ

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52045050T20C13A2EA1000/

2013/2/23付

 国際結婚が破綻したとき、子どもをめぐる争いをどう解決すればいいか。その原則を定めた「ハーグ条約」への加盟が、今国会で承認される見通しになった。年内にも加盟が実現する。

 条約には現在89カ国が加盟している。ここ数年、米国はじめ先進各国は日本に加盟を強く迫っており、安倍晋三首相訪米前の方針決定には、オ バマ米大統領への土産という要素もある。しかし、いまや国際結婚は当たり前だ。外圧に関係なく、紛争は国際ルールで解決を図るのが当然だろう。

 ただ、紛争は千差万別だ。加盟後に向け、子の利益を優先しつつ多様なケースを適切に処理するための体制をつくる必要がある。

 親の片方が16歳未満の子を定住していた国から一方的に国外に連れ去った場合には、定住国に子を戻したうえで紛争を解決する。これがハーグ条約の趣旨だ。理不尽な子の連れ去りを防ぐには、この原則を守るのが前提である。

 しかし、子の連れ去りにはいろいろな理由がある。日本が加盟に消極的だったのは、子を連れて帰国した女性に夫の暴力を訴える例が少なくな かったからだ。また、相手国に戻って親権を争う裁判が起きると、法制度の違いや言葉の壁、費用が日本人にとって重い負担になるという懸念も根強い。

 条約は「子に重大な危険がある場合」は例外として子を返還しなくてもいいと定めている。日本人が外国から子を連れ帰った場合だと、返還の是 非を最終的に判断するのは日本の裁判所になる。政府は、返還を拒否できる例を国内法でより具体的に示す方針だが、各国の実情も調べ、子の利益を考えたきめ 細かい仕組みが必要だ。

 条約の運用は、外務省に置く「中央当局」を中心に法務省など多くの省庁が協力する形になる。

 加盟後にどの程度の申立件数があるかは分からない。外国での不慣れな裁判に臨む邦人への支援の強化、子が日本から一方的に連れ去られた事案への対応なども含め、準備を急がねばならない。

12年前