高知新聞:【ハーグ条約】「子の利益」優先の議論を

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【ハーグ条約】「子の利益」優先の議論を

2013年02月08日08時23分
 国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、政府が来月、承認案と関連法案を国会に再提出するという。
いずれも昨年の民主党政権時代に国会提出されたが、衆院解散でいったん廃案となった。
無断で子連れ帰国する日本人女性の多さが、欧米などで問題になっている。主要国で唯一未加盟の日本に対する風当たりは強まっているが、国民的関心は高いとは言えない。子どもの幸せを優先した深い議論を期待したい。
離婚後の親子関係をめぐる法制度は国によって異なる。日本は家父長制度の名残で一方にしか親権を認めておらず、また子どもは、母親が引き取るケースが圧倒的に多い。
これに対し、欧米は共同親権が主流で、離婚しても親子関係は続くという考え方がある。一方の親が無断で子どもを国外へ連れ出し、他方の親が会えなくなる事態に対処するのがハーグ条約だ。1983年の発効以来、既に89カ国が加盟している。
条約は一方が子連れ帰国した場合、まず元の居住国に戻すことが原則だが、日本には元夫の家庭内暴力(DV)から逃れるため、子どもを連れ出さざるを得ないと訴える女性も多い。
子どもの心身に重大な危険が及ぶ場合など、連れ出された先の裁判所の判断で拒否することもできる。これについても仕組みが十分かを不安視する声は与党内にも根強い。
加盟の是非の議論が分かれ、与野党の対立で審議が進まない間にも、日本に連れ去られた子どもの返還を求める事例は年間数十件に上っているという。米国では、日本人の母親が子どもを日本に連れ去ったとして親権妨害罪で訴追される事態も起きている。
国際結婚が珍しくなくなった今、日本人の「常識」が、国際社会では通じないことを国民に周知する必要があるのではないか。
ハーグ条約加盟は、今月下旬で調整中の日米首脳会談で議題の一つになるもようだ。2011年の会談で加盟を公約化しながら実現できなかった経緯もある。安倍政権としては国内手続きを進める決意を示し、野田前政権との違いをアピールしたいところだろう。
条約は「子の利益が最も重要」とうたう。日本としても異論はないはずだ。そのために国内法の整備はどうあるべきか。論点は少なくない。
11年前