沖縄タイムス:「非婚母に寡婦控除を」日弁連が要望

http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-01-17_44057

結婚をせずに(非婚で)子どもを生んだ母子家庭に対する「寡婦控除」適用問題で、日本弁護士連合会は 16日、国や東京都、沖縄県、那覇市など6団体に対し、非婚の母に寡婦控除を「みなし適用」し経済的苦境を救済するよう要望する、と発表した。非婚家庭へ 適用されないのは法の下の平等に反しているとして、県内外の非婚の母3人が日弁連に人権救済を申し立てていた。寡婦控除に対する人権救済意見は初めて。文 書発効は11日付。

所得税法の「寡婦控除」は、夫との死別や離婚した母子家庭に適用される。同控除で算出された所得は、 地方税、国民健康保険料、公営住宅入居資格や賃料、保育料算定の基準とされるため、非婚の母子家庭は、離婚や死別で母子家庭となったケースに比べ、同じ収 入でも課税や保険料、保育料が高く設定され、経済的負担が重い。

日弁連は、非婚の母は寡婦控除が適用されないことで公共料金算定などで「著しい不利益を受けている」と認め、母に「婚姻歴が有る無し」によって非婚の母やその子が不利益を被ることは憲法14条や子どもの権利条約に違反すると断定した。

申立人の一人である沖縄県在住の非婚の母は2009年3月、寡婦控除が適用されなかったため、収入が入居要件を超えたとして、県営住宅の退去を命じられ、退去を余儀なくされている。(黒島美奈子)

関係者から歓迎の声

寡婦控除に対する人権救済申し立てで、日弁連が非婚の母へ寡婦控除をみなし適用し、経済的救済を要望したことについて、関係者から歓迎する声が上がった。県や那覇市は「要望書を見て対応を検討したい」とコメントしている。

代理人の一人、金澄道子弁護士は日弁連の要望について「婚姻歴の有る無しで税控除の有無を区別するこ とは、母親はもちろん子どもの立場からも法の下の平等に反するとしており、画期的」と評価。「非婚の母子家庭の経済的困窮をみれば、社会福祉の観点から自 治体や都道府県は早急に対策を講じるべきだ」と話した。

県営住宅から退去を命じられ、救済を申し立てた非婚の母(48)=那覇市=は現在、娘と共に民間ア パートで暮らす。「県営住宅から引っ越し生活を立て直すまでは本当につらかった。税控除を受けられない非婚家庭の貧困は深刻。自治体は寡婦控除が適用され る住民税で社会サービスや社会保障の額を算定しており、ほかの母子家庭同様、あらゆる面でのみなし適用を実行してほしい」と願った。

同問題に取り組むNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(東京都)の赤石千衣子理事は「積年の訴えが認められた。今後は所得税法改正で非婚の母や婚外子への差別を無くしてほしい」と語った。

県によると、保育料算定に限った県内の寡婦控除「みなし適用」は昨年9月末時点で那覇、宜野湾、沖 縄、糸満、うるま、北谷の5市1町が実施している。与世田兼稔副知事は「書面を見ていない中では、判断しかねる」と述べ、今後担当部局などと精査する姿勢 を示した。崎山八郎福祉保健部長は「要望書が届き次第、担当課を交え、対応を検討したい」と述べた。翁長雄志那覇市長は「中身をしっかり確認した後にコメ ントしたい」とした。

12年前