日米首脳会談 来月実施で一致
日米外相会談がワシントンで行われ、アメリカのクリントン国務長官は、沖縄県の尖閣諸島を巡る問題 について、「日本の施政権を損なおうとするいかなる行為にも反対する」と中国を強くけん制するとともに、来月、安倍総理大臣とオバマ大統領による日米首脳 会談を行うことで一致しました。
岸田外務大臣は、日本時間19日朝早く、ワシントンの国務省で、クリントン国務長官と日米外相会談を行い、このあと両外相はそろって記者会見しました。
この中で、岸田大臣は、沖縄県の尖閣諸島の周辺で、中国当局の船が日本の領海を頻繁に侵犯していることについて、「尖閣諸島が、わが国固有の領土だという基本的立場について譲歩はしない。ただ、中国側を挑発せず、冷静に対応する考えだ」と述べました。
こ れに対し、クリントン長官は、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲内だという認識を示すとともに、「尖閣諸島は日本の施政下にあり、日本の施政権を損な おうとする、いかなる行為にも反対する。双方に対し、平和的な方法で事態の悪化を防ぐ措置を取るよう求める」と述べ、これまでより踏み込んだ表現で、中国 を強くけん制しました。
また、両外相は、来月の第3週、17日からの週に、安倍総理大臣がアメリカを訪問し、オバマ大統領と初めての日米首脳会談を行うことで一致し、岸田大臣は「首脳会談が、日米関係の一層の強化を明確に示すものとなるよう、準備を加速させることを確認した」と述べました。
一方、沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題を巡って、岸田大臣が、日米合意に基づいて、名護市辺野古への移設を進める考えを伝えたのに対し、クリントン長官は早期の移設実現に期待感を示しました。
さらに、岸田大臣は、国際結婚が破綻した場合などに相手の承認を得ないで、子どもを国外に連れ出すことを認めない「ハーグ条約」への加盟に向けて、次の通常国会で必要な法案の成立を目指す考えを伝えました。
クリントン発言の背景は
クリントン長官が、18日、岸田外務大臣との会談の後の記者会見で、沖縄県の尖閣諸島を巡る中国の対応について、「日本の施政権を損な う、あらゆる一方的な行為に反対を表明する」と、これまでになく強いことばで中国に対し強硬な姿勢を改めるよう強くけん制した背景には、アメリカ政府内で 日中の対立への危機感が急激に高まっていることがあります。
去年9月に日本が尖閣諸島を国有化して以来、中国側の激しい反発が続いていましたが、 アメリカ政府はこれまで、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」としながらも、「領土問題には立ち入らない」「対話による平和的解決を望む」とする慎重 な立場を強調し、中国側への配慮をにじませていました。
しかし、先月、中国当局の飛行機が尖閣諸島上空の日本の領空を侵犯し、さらに、今月には、 中国軍の軍用機を含む10数機が日本の防空識別圏に近づき、一部が圏内に入るなど中国側が対応をエスカレートさせていることから、偶発的な軍事衝突が起き る可能性もあるとして、アメリカ政府は急激に危機感を強めています。
このため、この問題を巡る日米間の連携が強固であることを強調するだけでな く、クリントン長官みずからが公に中国の行動に反対を表明することで中国側に圧力をかけ、事態の沈静化を目指すねらいがありました。ただ、この発言によっ て、中国側の強硬な姿勢が収まるのかどうかは分からず、日米両政府は引き続き、緊密に連携しながら中国に働きかけていくものとみられます。
外相“発言を高く評価”
岸田外務大臣は訪問先のワシントンで記者団に対し、「クリントン国務長官の発言を高く評価する。尖閣諸島を巡るアメリカの対応を確認で きたことは、この地域における安定にも資することではないか。事態をエスカレートさせないためにも、意義のあることだと感じている。尖閣諸島が、わが国固 有の領土だという基本的な姿勢を譲ることはないが、冷静に対応していきたい」と述べました。