NHK:くらし☆解説 「”子どもの気持ち”重視~離婚の調停手続き改正~」

きょうは、離婚をめぐる手続きがテーマです。友井解説委員とお伝えします。

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Q1:「“子どもの気持ち”重視~離婚の調停手続き改正~」というタイトルですが、どういうことですか。

A1:離婚は、夫婦、大人同士の問題ではありますが、子ども中心、子どもにとってどうか、という視点で考えることが必要ではないか、ということです。
夫婦で話し合いがつかず、裁判所に持ち込まれるケースがありますが、裁判官などをまじえて話し合う手続きが今年から新しくなって、子どもの気持ちを大事にしようと、強調されるようになったのです。

Q2:離婚にあたって、子どもの気持ちを考えるということですよね。

A2:はい。父親と母親の争いは、子どもにとって大きな負担です。
争いが激しくなると、父親も母親も、自分のことで精一杯になってしまいがちですし、お互いに「そっちが悪い」と非難して、「子どもに会いたい」「会わせない」とやりあうと、子どもは辛いわけです。
年齢にもよりますが、子どもが、「親の仲が悪くなったのは、自分が悪い子だったからではないか」と思い悩む、
「自分が何か言うと、またケンカの原因になるかも知れない」と気兼ねして、混乱や不安を抱えて、親にも打ち明けられない、ということがあります。

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Q3:そうことがあるかも知れませんね。

A3:親の離婚を経験する子どもは、おととしは1年間で、23万5000人でした。

Q4:少なくない数ですね。

A4:今は、離婚は特別なことではないので、毎年、20万人を超えています。
こうした状況を受けて、親同士の争いを、なるべく早く解決できるようにと、法律が変わったわけです。

Q5:どう変わったのですか。

A5:裁判所では、裁判だけではなく、裁判官などの第三者をまじえて話し合う調停などの手続きもあるのですが、その法律が変わりました。
子どもの気持ちを重視することが強調され、手続きとしては、できるだけ子どもの意思を確認して配慮するよう、明記されました。
必要があれば、子どものために弁護士をつけることができる、手続き代理人という仕組みもできました。

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Q6:子どもの意思を確認、尊重すると言っても、どうするのですか。

A6:家庭裁判所には、調査官という、心理学などの専門家がいて、その役割が重要になってきます。
子どもに会って、「あなたが悪いわけではない」「あなたの気持ちを大事にしたい」「思っていることを、遠慮なく聞かせて欲しい」と話しかけ、結果を裁判官や親にも伝えます。
小さい子どもは言葉にするのは難しいので、表情や仕草から読み取ることも大事です。
もう一つが、場合によって、子どもに弁護士がついて手続きに参加する仕組みです。

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Q7:どういうものですか。

A7:弁護士が、子どもの立場から意見を言い、手続きの内容を子どもに説明する役目を果たそう、という仕組みです。
弁護士の費用を誰が負担するか、という問題などもあって、どれだけ活用されるか、まだわかりませんが、子どもの気持ちを手続きに反映させる仕組みの一つだと見ることができます。

Q8:うまくいくのでしょうか。

A8:全てうまくはいかないにしても、少しでもよりよい解決を、ということです。
例えば、離婚した後に、離れて暮らすことになった親が、子どもに会いたい、会わせて欲しいと求めるケースが増えています

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Q9:増え続けていますね。

A9:10年間で、2点以上です。
直接、子どもに会いたいと求めるケースだけでなく、離婚の話し合いでも、どれだけ子どもに会えるようにするか、もめることがあります。
養育費を払うかどうかと、交換条件、駆け引きの材料になるようなケースもあります。
大人同士の争いに目がいっている時に、第三者が入って、親にも言い出せなかった子どもの気持ちを引き出すことができれば、その気持ちを知って、父親や母親の考えが変わることもある、と期待されているわけです。

Q10:どういう時ですか。

A10:子どもをどちらが引き取るかが争われて、子どもが「自分のせいだ」と感じていたことに、親が気づいていない場合とか、
お父さんと、あるいはお母さんと、「二人きりで会いたい」という言葉が、子どもの気持ちに気づかせる、
親同士が、争いを長引かせないように、できるかぎり協力していくようになる、子どもと会う回数について折り合いをつけるようになるようなことです。

Q11:そういうことがあるわけですね。

A11:はい。調査官や弁護士には、子どもの本音を聞き出す力、読み取る力を向上させてもらわなければなりません。
子どもが納得感を得られるか、ということもポイントです。
大切にしてくれると感じられるか、蚊帳の外に置かれていると感じないようにできるか、ということです。

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ただ、第三者が子どもから聞き取りをしたとしても、その結果が受け入れられない場合もありますので、簡単にはいきません。
社会的な考え方も影響していると、専門家は指摘しています。

Q12:それはどうしてですか。

A12:離婚したら、二度と子どもに会えないかも知れない、一方では、不用意に会わせたら子どもを連れ去られるのではないか、そういう考えが背景にあって争いが激しくなるというわけです。
夫婦ではなくなっても、親子は親子なのだから、時々会うのは自然なことだし、子どもの生活や教育にかかる費用は分担するものだと考えられるようになれば、だいぶ変わるという指摘です。

Q13:でも、社会的な考え方というのは、すぐには変わりませんよね。

A13:一足飛びにはいきません。
裁判所は、原則として、離婚後も親子の交流を続けた方が、子どもにとっていいことだという姿勢を示していますが、運用はそうなっていないという批判もあります。
ただ、実際に、裁判所に持ち込まれたら親子の交流が続く、ということになってきたら、社会的な考え、ルールが変わることにもつながります。
子どもと会うときに第三者が立ち会う支援や、そのための施設を増やすなどの環境作りが必要だという指摘もあります。
これは裁判所に持ち込まれるケースに限らない問題です。

Q14:夫婦の話し合いで離婚する時も、同じわけですね。

A14:去年から民法が改正され、離婚届も変わりました。
離れて暮らす親と子が、どのように交流を続け、養育費をどう分担するのか、あらかじめ決めておくようにと規定が設けられ、取り決めをしているか尋ねるチェック欄ができました。
子ども中心、子どものことを最優先に考えて下さいということも、盛り込まれています。
専門家が指摘するのは、離婚というのは、将来に向けた新たな関係作り、という側面がある、ということです。
子どものことを考えることが、すなわち将来を考えることだと言う人もいます。
夫婦の関係を解消する、過去の清算という面もありますが、離婚して終わりではなく、離婚した後に、父親として、母親として、子どもとどのような関係を作っていくのか、子どもにとってどうすることが一番いいのか、という視点が、重要になってきています。

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12年前