ハーグ条約加盟目指す 子の連れ去り 首相が法整備指示

ハーグ条約加盟目指す 子の連れ去り 首相が法整備指示

ハーグ条約は国境をまたいだ子の連れ去り事件の場合
子の返還について各国政府の義務を定めた条約であり、
そのためには子の返還に関する国内法の整備が必要です。
一方、この条約には面会交流についての文言も入っており、
条約の趣旨は、国際的な子の連れ去りの予防と
事件が生じた後の、子の監護の問題について、
現実的な共同養育に向けた道筋について当事者間の調整が可能なように
各国政府に努力を促すものと考えるべきです。

単独親権制度の国内法で、日本国内での連れ去り問題についてすら
日本の行政機関と裁判所は有効な対処をすることができません。
したがって、共同親権と原則交流の確立に向け国内法を整備せずに
条約を批准した場合、日本人と外国籍の親の間で子の返還についての
格差が生じ、また、日本国内の外国籍の親と、外国に住む親の間でも
格差が生じ、現実的にそのような行政や裁判所の対応はありえないし、
仮にそういうことをすれば現場は大混乱に陥るでしょう。

ハーグ条約に未加盟の国はたくさんあります。
その中でも日本だけが海外からの圧力にさらされるのは
日本がG7国というだけでなく、未加盟の国の中でも
子どもを連れ去れば会わせなくてもいい異常な国だからにほかなりません。
鳩山首相の言う「世界で日本は特殊な国だと思われつつある」という発言は
当たっていますが、すでに「思われつつある」ではなく「思われている」
という点で、認識が甘いです。

ところで、
「連れ去りの背景には元夫のドメスティックバイオレンス(DV)が多いとされ、
政府内でも慎重論は根強い」
ことについてはそういう議論はあるのかもしれませんが、
根拠が曖昧な上に、連れ去られた親を「DV加害者」とレッテル貼りする
ことになりかねず、丁寧な議論をすべきと私たちは考えます。
これは国内法の場合の引き離す際の対応にも当てはまりますが、
だめな親は引き離して当然という雑駁な議論では、
親のよしあしを第三者が決めることになりかねません。
他方、DV被害者の安全も慎重に確保され、
加害者とされた側にもきちんとした対応が可能な体制が取れないと
加害者とされた親と子どもとの面会もできないでしょうし、
どのような場合を例外とするかについても議論ができません。
DV被害者もDV被害者支援をしてきた側から見ても
心情的にも受け入れにくいのはたしかでしょう。

いずれにしても、条約調印の場合と同様、親権についての
抜本的な議論が具体的な事例に応じてなされていかなければならない時期に
すでに来ています。

「日本では離婚後の親権を母親が持つことが多いなど、欧米との家族観の違いもハードルだ」
ということではなく、欧米が現在の日本が持っていたのと似た家族観を
どう変えていったのかを学ぶことなしに、価値観の違いを議論すべきではありません。(宗像)

ハーグ条約加盟目指す 子の連れ去り 首相が法整備指示

2010年2月26日 東京新聞朝刊

国際結婚が破局した後、日本人の親が無断で子供を国外に連れ去るトラブルが相次いでいる問題で、政府は二十五日、連れ去られた子供を元の居住国に戻す仕組みを定めた「国際的な子の奪取に関するハーグ条約」への早期加盟を目指す方針を決めた。鳩山由紀夫首相が同日、岡田克也外相と千葉景子法相を官邸に呼び、子供の返還手続きを定める国内法整備などを急ぐよう指示した。

首相は同日夜、官邸で記者団に「世界で日本は特殊な国だと思われつつある。そうでないことを示すためにもハーグ条約について早く結論を出すことが重要だ」と強調した。加盟の時期については「今国会は無理だ」と述べ、二〇一一年以降になるとの見通しを示した。

同条約はオランダのハーグ国際私法会議で一九八〇年に採択され、八三年に発効した。欧米を中心に八十一カ国が加盟。先進七カ国中、日本だけが加盟しておらず、欧米各国は日本政府に加盟を再三要請している。

キャンベル米国務次官補も今月来日した際、「米議会でも懸案事項になっている。日米関係の大きな懸案になりかねない」と、早期加盟を迫った。

ただ加入するには課題も多い。連れ去りの背景には元夫のドメスティックバイオレンス(DV)が多いとされ、政府内でも慎重論は根強い。日本では離婚後の親権を母親が持つことが多いなど、欧米との家族観の違いもハードルだ。外務省内では「一年や二年で加盟できるような状況ではない」との声も出ている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010022602000084.html

15年前