在ホノルル日本国総領事館:子どもの親権をめぐる問題について

子どもの親権をめぐる問題について

http://www.honolulu.us.emb-japan.go.jp/jp/shinken.htm

近年、国際結婚のカップルが増えてきています。そうした流れは、日本と米国の間でも同様で、当館領事窓口にも国際結婚の届出、日米間のカップルの間に誕生した子どもの出生届のため来訪される方がたくさんいらっしゃいます。

しかしながら、その一方で、結婚生活で困難に直面したそれぞれ 国籍の異なる父または母のいずれかが、居住地の法律を顧みることなくもう一方の親の同意なしに子どもを連れ去り、問題になるケースも発生しています。結婚 生活が困難となり、離婚に直面する事態となったとき、子どもをどうするのか、特に将来にわたって子どもの養育と監護をどちらが行うのか、といった問題は常 に発生してきます。

今回は、特に米国に居住される日本の親御さんにとって、子どもとの関係、子どもを連れての移動についてぜひ留意していただきたい点を述べたいと思います。

1.実子誘拐罪の適用

   米国の国内法では、父母のいずれもが親権又は監護権を有する場合に、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得 ずに子ども連れ去れる行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注)。例えば、米国に住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを 日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法に違反することとなり、これらの国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があり ますし、実際に、逮捕されるケースが発生しています。国際結婚した後に生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要がありま す。

(注)米国においては、16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。州法により別途規定がある場合もある。

2.未成年の子どもの旅券申請

未成年の子どもに係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法 定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子どもの旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじ め在外公館に対してなされているときは、旅券の発給は、通常、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。その確認のため、 在外公館では、通常、子どもの旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の親権者に対し、同人が作成(自署)した「旅券申請同意書」の提 出をお願いしています。

 また、米国にお いては、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が、16歳未満の子を他方の親権者の同意を得ずに国外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があ ります。実際に、居住していた国への再入国に際し、子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配される事案 も生じており、当館では、在留邦人の皆様がこのような不利益を被ることを予防する観点から、16歳未満の子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意 思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭にて確認させて頂いておりますので、あらかじめご承知ください。

3.家庭問題に関する相談はお早めに関係団体・機関へ

日本人の親の中には、外国人の相手の方とのコミュニケーショ ン・ギャップや価値観の違いによるストレス、虐待など深刻な事態に直面した場合の戸惑い、外国における孤独感などから、ついつい日本に子供を連れて帰って しまおうと思われる方も多々いらっしゃるかと思います。しかしながら、そのような行動には上記で述べました多くのリスクが伴います。当地には、家庭の問 題・虐待等に対する人権の面からの対応を行っている団体及び機関があります。また、あなたのお子さんは、相手の方のお子さんでもあります。問題の兆候が見 え始めたら、お早めに各種団体・機関(注)にご相談されることをお勧めいたします。

 (注)関係団体・機関

  ① ハワイ州人権省児童虐待保護専用ライン

(Child Abuse Reporting, Department of Human Services)

    (808)832-5300

    ② ハワイ州人権省成人虐待保護専用ライン

(Adult Abuse Reporting, Department of Human Services)

    (808)832-5115(オアフ島)

    (808)241-3337(カウアイ島)

    (808)243-5151(マウイ島、ラナイ島、モロカイ島)

    (808)933-8820(ハワイ島・ヒロ地区、ハマクア地区、プナ地区)

    (808)327-6280(ハワイ島・カウ地区、コナ地区、コハラ地区、カムエラ地区)

 ③ 家庭内暴力アクション・センター(Domestic Violence Action Center)

電話番号:(808)531-3771

海外で生活されますと、個人生活も含め幾多の困難に直面されることも多々あるかと思います。しかし、思いがけず法律に違反し犯罪者となってしま いますと、その後の子供との関係にも様々な支障が出てきます。円満な家庭、円満な親子関係のために、上記の点を真剣に考慮していただきますようお願いいた します。

12年前