家庭弁護士の訟廷日記:面会交流が争点となる調停事件の実情及び審理の在り方 家裁月報第64巻第7号

2012年7月23日 (月)

【子ども】 面会交流が争点となる調停事件の実情及び審理の在り方 家裁月報第64巻第7号

http://shimanami.way-nifty.com/rikoninaka/2012/07/post-7585.html 

家裁月報第64巻第7号に、「面会交流が争点となる調停事件の実情及び審理の在り方」と題する論文が紹介されていました。

面会交流事件は、平成23年を平成11年と比較すると、父からの申立ては約5.2倍、母からの申立ては約2.8倍となっており、夫婦関係調整調停事件が平成23年と平成11年とではほぼ変わらないことに鑑みると、面会交流事件の増加が際立っています。

また、代理人が選任されているものも、離婚調停と比べると、面会交流は代理人が選任されている割合が高いようです。東京家裁の平成22年のデータ によれば、面会交流の場合は代理人なしが約29%で、離婚調停が約55%であることに鑑みると、代理人に依頼される場合が倍近くなっています。

本論文は、第6章で、東京家裁における面会交流が問題となる調停事件の審理の在り方について言及しております。監護親から禁止・制限されるべきと主張されることが多いものを中心に検討しています。

まず、非監護親による子の連れ去りのおそれについては、原則として、面会交流を禁止・制限すべき事由と評価されているようです。ただし、連れ去り を防止できるような条件を定めることができるような場合などには、必ずしも面会交流を禁止・制限すべき事由があるとは認められないとされています。

次に、非監護親による子の虐待のおそれ等ですが、これも、原則として、消極的な事由になりそうです。ただし、虐待の有無については慎重に判断される必要があるともされています。

さらに、非監護親の監護親に対する暴力等についても、消極的な事由とはなりますが、DVの存否自体が争われる場合も多いであろうし、監護親からの報告だけでは足りずに家裁調査官による子の調査等が必要になる場合が多いと解されるとされています。

子の拒絶についても、その年齢や発達の程度、拒絶の実質的な理由ないし背景、その他の事情に応じて、面会交流を禁止制限すべき自由にあたり得るとしつつも、忠誠葛藤の可能性もあることから、慎重に判断すべきとされています。

監護親又は非監護親の再婚等については、ただちには、面会交流を禁止制限すべき事由にはあたらないとされています。

面会交流って、代理人として取り扱う際に、本当に難しいです。

監護親に代理人がついており、また、非監護親に反発を感じていても、裁判所や代理人の説得に耳をかたむける方であれば、面会交流も前向いて進む場合が少なくありません。

問題は、面会交流を禁止制限する正当な事由がないのに、非監護親に著しい反発をしており、面会交流には全く応じてもらえないという事案です。

私は、離婚事件を受ける場合には、面会交流についての意向について相談者に打診して、正当な理由もないのに面会交流を否定する方の依頼は、ご相談者との間でトラブルがおこる可能性もあるので、お断りする方針でいます。

とはいえ、面会交流の禁止制限に正当な理由があると思われる場合には、子どもに与える悪影響も考慮する必要がありますので、その場合には、仕方がありませんが、実際のところ正当な理由があるような場合はそれほど多くはないような印象を抱いております。

今回のこの論文は、面会交流を考えるに際してよい教材になろうかと思います。

12年前