米で薄れる拉致問題への関心 ハーグ条約未加盟に不満 キャンベル発言背景

http://sankei.jp.msn.com/smp/world/news/120508/amr12050820550007-s.htm

2012.5.8 20:53

北朝鮮による日本人拉致と、国際結婚の破綻に伴う「子の連れ去り」問題を絡めたキャンベル米国務次官補の発言は、訪米した日本側の神経を逆なでするもので、拉致解決に向けた日米協力のあり方に暗い影を落とす可能性がある。

「短い時間しかいなかったのに、彼の話の半分ぐらいが子の連れ去り問題だった。両者を関連付けて考えているというメッセージだ」。拉致被害者の支援組織「救う会」の西岡力会長は7日の記者会見でぶぜんとした表情をみせた。

キャンベル氏の発言の背景には、ハーグ条約に加盟していない日本に対する米側の強い反発と米国内で拉致問題への関心が薄れていることがある。

今年3月下旬、米下院外交委人権問題小委員会は、子の連れ去り問題の解決に取り組まない国への制裁を求める法案を可決した。

法案は子の連れ去りに関する未解決事案が10件以上ある国について、公的訪問や文化交流などの停止、貿易制限などを検討するよう大統領に求める内容。ハーグ条約に未加盟の日本は各国の中で最多の156件が未解決状態で、日本を標的にした法案だったのは明らかだ。

日本政府も今年3月、条約加盟の方針に伴い、国内手続きを定める条約実施法案を閣議決定しているが、法案の審議入りのめどはたっていない。

離婚後、米国の州法では、合意があれば双方に親権を認めるケースが多いが、日本では民法の規定で一方の親にのみ親権が与えられるという違いも審議入りの遅れに影響している。

キャンベル氏は2010年2月に来日した際、外務省幹部に、「(同条約に未加盟であることは)拉致問題での米政府の対日支援に悪影響を及ぼす」と警告。拉致被害者と、子を連れ去られた米国人の悲しみには「共通点がある」と述べていた。

米議会にはキャンベル氏の発言通り、「ハーグ条約に加盟しなければ拉致問題を支持しにくい」(同筋)との空気があり、外務省が恐れていた日米関係への深刻な影響という懸念が現実のものとなってしまった。

(ワシントン 佐々木類)

12年前