東京新聞:1都6県 居所分からぬ小中学生500人

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2012年5月4日 朝刊

あす五日はこどもの日-。住民票がありながら一年以上安否が分からない小中学生が全国で千百九十一人に上り、関東一都六県でも約五百人いたことが文部科学省の学校基本調査(昨年五月一日現在)で分かった。配偶者の暴力(ドメスティックバイオレンス、DV)から母子で逃避したり、学校などに連絡しないまま外国籍の親と出国したりしたケースが少なくない。

 学校や行政が所在を把握できない子供が多数いる問題は先月、大阪府富田林市で九歳男児が何年間も行方不明になっている事態が発覚し、クローズアップされたが、これ以前から教育現場などで課題とされてきた。

 文科省の調査では、所在が一年以上不明な「居所不明の児童・生徒」が最も多いのは、愛知県の二百七十二人。次いで東京都二百人、大阪府百五十三人、神奈川県百四十二人、千葉県九十六人。都内の区市町村別では、練馬区四十四人、葛飾区四十三人、足立区三十一人-の順。

 DVや出国のほか、借金の取り立てからの逃避もあるとみられ、都教委は「調べればいいという問題ではない。見つかるまで追跡せよという指示は出していない」とする。

 文科省は昨年四月、都道府県教委に「民生委員や児童相談所と連携して情報共有するなど適切に対応をしてほしい」との通知を出している。
◆区市町村、手掛かりなく苦慮

 「行ってみたら空き家だった」「家そのものがなかった」-。行方が分からない小中学生の所在確認は、区市町村の判断に任されているが、手掛かりがなく、当惑するケースが少なくない。

 江東区では昨年五月時点で、「一年以上居所不明」の小学生が四人いた。「学校に編入して、しばらくすると来なくなり、家庭訪問をしたら既にいなかった」と区の担当者。失踪後に三人の母親から学校に電話があり、いずれも夫のDVから母子で逃れるためだったことが分かった。

 豊島区の居所不明の小中学生は統計上はゼロ。しかし、一年に満たない期間、行方が分からないケースはあった。ある小学校では昨春、姉妹が急に登校しなくなった。学校側は自宅を訪ねたが、住んでいる様子はなく、どこへ行ったか手掛かりはなかった。数カ月後、別の自治体から「転入してきた」と連絡があり、学校関係者は胸をなで下ろした。区教委は「DVから逃げたようだった。住民票が動かされていなかったので捜しようがなかった」と振り返る。

 両親の片方や親族が外国籍のケースも少なくない。世田谷区の場合、不明八人のうち七人が外国籍の姓名だったり、母親など親族が外国籍だったりした。区教委は「届け出をせずに外国に移住した」とみている。

 町田市の担当者は「子供は日本国籍でも親の片方が外国籍の場合、海外の実家に子供を連れて長期間出かけるケースもある」と話している。

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