http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120325/plc12032521060011-n1.htm
2012.3.25 21:04
25日の日加首脳会談は、人権に関する問題が隠れたテーマだったといえる。「人権重視」を掲げるハーパー首相は北朝鮮による拉致問題に関心が高い一方、国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」の推進者だからだ。
「拉致問題解決に向けたカナダの理解に感謝するとともに、引き続き協力を求めたい」
野田佳彦首相は会談で、北朝鮮の衛星打ち上げへの対応で連携強化を確認するとともに、拉致問題への協力要請も忘れなかった。
もともとハーパー首相は「人権問題に熱心で、北朝鮮の拉致問題には強い関心を寄せてきた」(外務省幹部)。カナダは国連人権委員会で拉致問題の解決を求める決議の共同提案国を長く務めた経緯もある。
そのハーパー首相が日本に再三求めてきたのがハーグ条約への加盟だ。ハーグ条約は国際結婚が破綻した親が日本に連れ帰った16歳未満の子供について、外国にいる親が返還を求めた場合は原則返還する内容。米国なども子供の連れ帰りを「拉致」と表現し、日本に加盟を迫っていた。
条約の承認案と関連法案は今国会に提出されている。このため、ハーパー首相は25日の会談で言及することは控えたが、高い関心を持ち続けていることに変わりはない。
しかし、日本国内にはハーグ条約加盟を機に日本の「単独親権」と異なる「共同親権」に道を開くことへの懸念が根強くあるほか、虐待や家庭内暴力(DV)を受ける恐れがある場合の危惧が完全に払拭されていないため、法案の審議入りのめどは立っていない。
政府・与党内では「ハーグ条約を放置すれば、北朝鮮非難を訴える日本への理解も低下する」(民主党中堅)との声も漏れている。(杉本康士)