離婚後の親子交流/子どもの発達上の問題防ぐ

神戸新聞5月28日記事
日本の親権制度のもとで、
kネットは親権がないことが面会拒否の理由とされることを訴えてきたので
原則共同親権と原則交流の確立を求めています。
相手への拒否感情が強ければ、面会拒否が通ってしまう現状は、
「両親間の葛藤」とは次元の違う問題とは思いますが、
いずれにせよ、離婚時に葛藤があるのは当たり前で、
その感情を、共同養育をベースにどう処理するかは
当事者間で難しければ、第三者が関与するしかないことです。
そのことによって、共同養育のための共同親権が
現実的に可能となるでしょう。

http://www.kobe-np.co.jp/rentoku/kurashi/201005kazoku/04.shtml

ずっと家族がほしかった インタビュー編
(4)神戸親和女子大教授 棚瀬一代さん 離婚後の親子交流/子どもの発達上の問題防ぐ

2009年の離婚件数は約25万件。過半数に未成年の子どもがいる。
別居親(多くの場合父親)と子どもとの面会交流をめぐり元夫婦が対立するケースが増えている。
少なくとも隔週末会える米国と違い、日本は多くても月1回程度。全く会えないこともある。
これまで子どもの発達への離婚の影響はあまり論じられなかった。実際には「原因は自分にある」と思い込んで自尊感情が低くなり、数年後に鬱(うつ)状態になったり、成長して結婚しても家庭の築き方が分からなかったりする。別居親と頻繁に会うことは、子どもの中に父親(母親)像をしっかり根づかせる。人格形成上、非常に重要なことだ。
単独親権制度の日本では親権は父か母のどちらかだ。
民法には面会交流の規定はなく、親権を持たない親が面会を求めても、親権者が強く拒めば難しい。となると泣き寝入りか、家庭裁判所に申し立てるしかない。子どもが「会いたくない」と言う場合もあるが、それは親権者との生活による意識的あるいは無意識的な〝洗脳〟ではないだろうか。親権は単独か共同を選べるようにすることと、面会を徹底することが子どもの発達上の問題を防ぐことになる。
「双方が子どもにかかわるのは混乱の元」という考えが根強いが、虐待などの例外を除き、親子関係は継続すべきだ。
米国では面会交流権が法的に認められている。
共同親権と単独親権を選べる米国などでは「双方と会うことが子どもの福祉にかなう」という視点がある。また裁判所が、相手への不信感などの心理に焦点を当てた親のグループセッションを開き、面会を拒む心理的な障壁を取り除くことに努めている。相手に抱く否定的感情の根源を探る試みで、離婚後の葛藤(かっとう)を和らげる効果もある。
司法統計によると、面会交流に関する調停・審判は08年度は審判1020件、調停6261件。ここ10年で4倍近くに増えた。
日本の裁判所が用いる親の教育プログラムは、離婚が子どもに及ぼす影響を説くDVDを見せる程度。相手への復讐(ふくしゅう)として子どもにわざと会わせない人や「二度とかかわりたくない」と養育費の受け取りを拒否する人もいる。子どもの福祉に著しく反すると知ってほしい。
家裁の調停委員だったころ、「子どもに会いたい」と訴えたある父親に、同僚の高齢男性が「自分のころなら考えられない」と口にしたことがある。育児参加による男性の意識変化は、面会交流にも現れている。
幼い子どもにも離婚の理由を説明するのが米国では当然視される。
離婚後、父親に引き取られたある小学生の話をしたい。9歳の彼女は「ずっと不安な気持ちが消えず、勉強にも遊びにも集中できない」と話し、「母親に会えない1カ月が長い」とつらそうだった。その後、彼女は勇気を出して、不安の原因だった両親の離婚の理由を尋ねた。
単独親権を選ぶにしても共同養育は徹底すべきで、子どもが幼くても離婚の理由をきちんと説明すること。そうでないと突然親がいなくなる事態を子どもはのみ込めない。
結婚生活が不幸なら離婚もやむを得ない選択だが、子どもとの関係はずっと続く。「離婚は縁切り」という時代は終わったのだから。

「たとえ離婚しても、子どもは両親と継続的かつ直接的に接触するのが望ましい」と話す棚瀬一代教授=神戸市北区鈴蘭台北町7、神戸親和女子大
たなせ・かずよ
1943年福島県出身。京大大学院修了。90年から12年間大津家裁家事調停委員。「離婚で壊れる子どもたち」「虐待と離婚の心的外傷」などの著書がある。
(黒川 裕生)
(2010/05/28)

14年前