ハーグ条約「日本独特」は誤解招く
「毎日新聞」2月25日付P13の『メディア時評』で、コリン・ジョーンズ同志社大法科大学院教授(英米法)が「ハーグ条約」に向け、日本国内の要綱案について論評している。
氏の指摘通り、『「外国人のDV夫や虐待父から、日本人女性をどう保護するか』を出発点としている」ことは、私も強く感じている。
日本の大手マスコミも同調し、さらに増幅した報道をするので、なお一層、読者はそのような印象を受ける。
ハーグ条約の趣旨は”今まで子供が生活していた国の司法が判断すること”のはずだ。
しかし、日本の要綱案の趣旨は”無断で子を日本に連れ去った側が、子供の返還を拒否できること”になっている。
こんな理屈が、世界で通用するのか、日本人の私でさえ、腑に落ちない。
まず、ハーグ条約の趣旨に日本は賛同できるのか?
趣旨とは関係なく、「日本女性とその子どもを守るのが国益」という論理のすり替えで対応しようとしているように思える。
ジョーンズ氏がいうように「『子供の利益』が理由にされると、人は簡単に納得してしまうが、誰が何に基づいてその判断をするかが肝心」であって、日本の要綱案のように、”返還拒否”を第1義の課題としているような「例外処置」を主張するのは、通用するのだろうか。
具体的に”配偶者へのDV””子供への虐待””連れ去った親が元の国で子を養育することができない”場合などが「返還拒否」の理由として掲げて、認めさせようとしているわけだが。
こういうことを言いだしたら、”日本人は特別”だから、認めろ!と世界に大声を出しているようなもので、外国人からだけでなく、誰が聞いても「それは日本人の”エゴ”でしょ。ハーグ条約の趣旨は賛成できてるの?」と言われると思う。
ハーグ条約に加盟している国に、日本が「返還拒否」の理由にしていることの法律がないのだろうか。あれば、元住んでいた国の司法に判断されるべきではないだろうか。
第1義的なことを棚に上げて、第2義的なことから始めようとする日本人の”ズルさ”は、率直さのかけらも感じない。私は日本人のこのような性癖は世界には通用しないと常々思っている。
ジョーンズ氏の指摘は、当たり前のことを言っているに過ぎない。「たかが、ハーグ条約」かもしれないが、下手なことをすると、今日までの日本人の美徳と言われてきたものをすべて、吹っ飛ばす爆弾を抱えているかもしれない。