質問なるほドリ:ハーグ条約って?=回答・反橋希美
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◇国際離婚、子の扱い規定 日本人女性の連れ帰り問題に
なるほドリ 最近耳にする「ハーグ条約」ってどんな条約?
記者 正式な名前を「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」といいます。離婚や別居した夫婦の一方が、国境を越えて子供を奪うのを防ぐための ルールを定めています。83年に発効しましたが、主要8カ国(G8)のうち加盟していないのは日本だけで、米国などから加盟を強く迫られ、国際的な問題に なっています。
Q なぜ問題になってるの?
A 米国やカナダ、フランスなどに住んでいた日本人女性が結婚生活が破綻した後、父親に無断で子供を日本へ連れて帰るケースが問題視されるように なったからです。厚生労働省によると、10年に国際結婚した日本人は、条約発効当時の3倍の約3万人。一方で国際離婚も10年で約1万9000人と高い水 準にあり、加盟しない場合、今後も同様のトラブルが増えるのではとみられているのです。
Q 子供を引き取って育てている親が自分の国に帰るのもいけないの?
A 欧米を中心とする加盟国は、離婚後も「両方の親が養育にかかわることが子の利益にかなう」という考えから「共同親権制」が主流で、転居や国外 への旅行なども双方の親の同意が必要な場合が多いのです。そうした国では、一方の親に無断で国外に移住すると犯罪とみなされ誘拐罪に問われます。単独親権 制で、離婚後に親子の交流が途絶えてしまうこともある日本とは感覚が違うかもしれませんね。
Q 子供にとっては両方の親に会える方がいいもんね。早く加盟すればよかったのに。
A 日本が慎重だったのも理由があります。外国から子供を連れ帰ってきた母親の中には、元夫から配偶者への暴力(DV)を受け、他の手段を見つけ られずに、やむを得ず子供とともに帰国した人たちもいます。条約では「子供が耐え難い状態に置かれる重大な危険がある場合」は例外的に返還を拒否できます が、条件が厳しすぎるという批判があります。条約がつくられた当時は、普段養育している親から別居している親が子供を奪う場合が想定されていましたが、実 際は逆に、普段養育している親が自国に帰る事例が多く、「条約を根本から見直すべきだ」との声もあります。各国でも議論されてきていますが、もし日本が加 盟した場合は、条約の改善についても積極的に発言したいですね。(大阪学芸部)
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