ハーグ条約加盟要綱案:子の返還拒否、DV考慮
◇東京・大阪で裁判…3審制
政府が加盟を目指す「ハーグ条約」(加盟87カ国)の国内手続きを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の担当部会は23日、東京・大阪の2家裁で子を返還するかどうか決める裁判を行うことなどを盛り込んだ要綱案をまとめた。2月の総会で正式に要綱として決定し、法相に答申する。法務省は要綱を基に外務省と連携しながら3月の法案提出を目指す。
ハーグ条約は、婚姻関係が破綻した父母の一方が無断で子を国外に連れ去った場合、原則として子を元の国に返還し、どちらが養育するかを決定するとのルールを定めている。
今回決定した要綱案では、日本に連れ去られた子を元の国に返還する手続きを規定。連れ去られた側の親の申し立てにより2家裁のうちいずれかで非公開の裁判を行い原則通り返すかどうかを決めることとした。
手続きは3審制。家裁の決定に不服がある場合は東京高裁・大阪高裁に即時抗告、さらに不服なら最高裁に特別抗告できる。
条約は、16歳未満の子が加盟国から監護権(養育する権利)を侵害して連れ去られている場合、子を返還しなければならないと定める。
これに対し、今回の要綱案では、家裁が返還拒否を考慮できる事情として、連れ去られた側に(1)子に暴力をふるう恐れ(2)子に心理的外傷を与え るほどの配偶者への暴力(DV)をふるう恐れ--がある場合を明示。連れ去られた親や連れ去った親が元の国で子を養育することが困難な場合も考慮できると 定めた。
また、連れ去った側が家裁の返還命令に従わない場合は、子を返還するまで金銭の支払いを命じる「間接強制」を実施。それでも従わない時は、執行官が子を引き離して連れ去られた側に渡す方法を採ることとした。
裁判費用は原則として各親の自己負担。家裁は手続き中に子が再び別の国に移動しないよう、出国禁止命令や旅券提出命令を出すこともできる。
一方、連れ去られた親が子との面会を求めて申し立てた場合の手続きについては、返還を求めるケースと異なり、国内事案と同じ通常の裁判手続きで行うことにした。【伊藤一郎、反橋希美】
毎日新聞 2012年1月23日 22時21分