http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012012402000019.html
2012年1月24日 朝刊
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」の加盟に向けて、法制審議会(法相の諮問機 関)は二十三日の部会で、関連法の要綱案をまとめた。日本に子どもを連れ帰った親が子どもの返還命令に応じなければ、家庭裁判所が外国にいるもう一方の親 に子どもを引き渡せる強制執行権を明記。返還を拒否できる条件や、国内で子どもを捜す政府機関「中央当局」の設置も盛った。中央当局は外務省に置くことを 想定している。
法制審は二月にも小川敏夫法相に答申。政府は二十四日召集の通常国会に法案を提出する方針で、会期内の成立を目指す。
要綱案では、外国にいる親が子どもの返還を日本の家裁に申し立てた場合、家裁は子どもの意見に配慮した上で、元の国に戻すかどうかを決める。返還 決定後は、連れ帰った親が一定期日までに子どもを返さなければ、民事執行法に基づき金銭支払いを求めて返還を促す。それでも応じなければ、家裁の指示を受 けた執行官が強制的に一方の親に引き渡すとした。
返還を拒否できるケースとしては、外国にいる親の申し立てが連れ出しから一年を経過して、子どもが新しい環境に適応している場合や(1)子どもが 返還されることを拒んでいる(2)返還すると子どもや配偶者が暴力を振るわれる恐れがある(3)外国にいる親が連れ出しに同意している-ことなどを列挙し た。審理は東京、大阪の両家裁が行い、原則非公開。三審制で、決定に不服があれば高等裁判所や最高裁判所に抗告できる。
外務省は現在、外国にいる親と日本に連れ帰った親が友好的に問題解決できるよう、民事調停制度の紹介などの支援を行うことを検討している。
<ハーグ条約> 国際結婚が破綻した後、一方の親が無断で子どもを国外へ連れ出し、もう一方の親が会えなくなる事態に対処するための条約。加盟国 は返還を求められた場合、子どもの所在を調べ、必要と判断されれば、元に住んでいた国に戻す義務を負う。1983年発効で現在87カ国が加盟。日本は昨年 5月、加盟に向けて国内法の整備を進めることを閣議了解した。主要国(G8)首脳会議メンバーで未締結は日本だけで、国際離婚が増える中、日本は加盟を欧 米諸国などに促されてきた。