【離婚 その先に】<5>親権 本当は手放したくない
地方紙では最近、離婚や親権に関する特集が活発です。
主に同居親側がとりあげられることが多かったのですが
最近は、別居親の存在と親権の問題について扱う記事も出てきました。
やはり、問題は親権を奪われれば子どもの養育にかかわる保障の
なくなる「単独親権制度」です。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/topics/20100619/20100619_0001.shtml
2010年06月19日 12:03
親権を失い、わが子に会いたくても会わせてもらえない親もいる。無意識のうちに子どもの姿を追う自分に気が付く
「離れて暮らしても、お父さんはお父さんだから。いつでも見守っているから」-一人娘(8)と離れて半年、思いはまだ伝えられていない。
聡さん(32)は昨年末に離婚した。2年前、勤めていた会社が不況の影響で倒産。人生の歯車が狂った。再就職してもすぐに辞めてしまい、次第に職探しもせず、自宅に引きこもるようになった。
妻は娘を連れて近所の実家に戻った。2カ月後、離婚が成立。親権は妻が持った。養育費を要求しない代わりに、離婚後の面会を拒絶された。長距離走が苦手な娘のために、毎朝一緒にジョギングしていたほど、子煩悩だったにもかかわらず。
離婚後、働き始めた。給料の中から養育費を渡そうと、元妻の実家に電話した。一方的に切られた。娘の携帯電話は着信拒否になっていた。
1度だけ、衝動的に娘に会いに行った。道の反対側を1人で走る姿を見つけた。「このまま連れて帰りたいと思いましたよ。でも、傷つくのは娘でしょ。そう思ったらね…」。声を掛けずに帰った。その後は会いに行っていない。
「お父さんとお母さんは仲良しでなくなったから、お母さんは自分の家に戻るんだ。お父さんはお仕事があるから一緒に行けないけど、週末には会いに行くからね」-息子(7)に自分の言葉で説明した。息子は黙っていた。
別居して2年になる会社員の豊さん(35)。息子とのつながりを手放したくない一心で、離婚しない選択をした。
単身赴任中だった。妻は「私の気持ちを理解してくれない」と、息子を連れて関西の実家へ帰った。生活費は求められた。息子との面会を継続するには応じるしかなく、月10万円近く払ってきた。
毎週末、息子に会うために福岡から関西まで出向いた。交通費や宿泊代は月10万円を超えた。昨秋、関西にある支社への転勤が認められると、会社と妻子の住む街の中間に部屋を借りた。現在もほぼ毎週、息子と過ごしている。
「子どもは、離れていった親は自分を嫌ったと考えると思う。もう少し大人になるまで、見放されたと思わせたくない」-望みはそれだけ。今の関係を壊したら、息子のためにならないと信じる。
豊さんは周囲から離婚を勧められても、絶対に首を縦に振らない。現行の法では、籍を抜くと息子に会えなくなる可能性が高い。だから今の形態にこだわる。親権を失いたくない思いが心身を支える。
日曜日の夕方はいつまでたっても慣れない。毎回、身のよじれる思いになる。5時すぎ。「夕飯できたぞ」のひと言に息子は過敏に反応する。それまで楽しそうにしていても、急にしがみついてきて離れない。その間、父子はひと言も話さない。お互い、ただ黙って抱き締めあう。
ぐっと言葉数が減った食卓を囲んだ後、妻の待つ家まで電車で送る。片道50分。独りの部屋に戻ると、疲れ以上の“何か”がのし掛かる。
「やっぱり何も解決してないなっていう感じがします。それでも、方法はこれしかないんで」 (佐々木直樹)
(文中仮名)
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●単独親権制度
日本は、未成年の子がいる夫婦が離婚する際、父母のどちらかを親権者に指定する単独親権制度を採用。養育は一方の親が担い、親権を失った親と子の交流は保証されるとは限らない。このため、連れ去りなどの問題が生じることもある。
子どもとの面会を求め、家庭裁判所に審判や調停を申し立てる件数は年々増加。司法統計年報によると、2000年度に新規に受理された審判数は322件、調停は2406件だったが、08年度には審判1020件、調停6261件に上り、共同親権の法制度化を求める動きもある。
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