TBS・NEWS23(11月21日放送)のウィスコンシン州事件の判決“前”の報道

「娘連れ去り」、邦人女性にまもなく判決

まもなく判決が出るアメリカでの裁判が注目されています。被告は、かつてアメリカで暮らしていた日本人女性。『我が子を無断で日本へ連れ帰った』ことが罪に問われています。なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか。背景には日本が批准していないある『国際条約』をめぐる問題があります。  「運動会、誕生日の写真もママは見ました、ありがとう。元気そうで安心したけど、だいぶやせてしまったのかな、心配しています」
母から娘にあてられた手紙。娘は兵庫県にある母の実家で暮らしています。一方、母はアメリカで身柄を拘束されています。
「女性は今、ウィスコンシン州にあるこの施設で拘置され、裁判を受けています」(記者)
この日本人女性は、2002年にアメリカで医師と結婚し、同じ年に娘が生まれました。しかし、数年後には夫婦仲は悪化し、離婚訴訟に発展。そして2008年2月。
「帰ったら誰もいなかったのです。遠くには行っていないと思ったのですが・・・」(娘の父親、モーゼス・ガルシアさん)
女性は娘を連れて、日本に戻ってしまいました。
「娘が“連れ去られた”のは2月だったので、彼女が貼ったものはバレンタインの時が最後です」(娘の父親、モーゼス・ガルシアさん)
実はアメリカでは日本人の配偶者や元配偶者に子どもを連れ去られたと訴えるケースが120件以上に上っていて、FBIのサイトには、日本人女性の指名手配情報が顔写真入りで掲載されているほどです。
背景にあるのがハーグ条約の問題です。ハーグ条約とは、子どもの連れ去りを防止するための国際条約で、片方の親が子どもを自国に連れ帰った場合でも、子どもは、元の国に戻さなければならないというものです。
日本はこの条約を批准していないのです。アメリカなどからの批判を受け、日本政府は、早期の批准を目指すことを明らかにしています。しかし、専門家は問題点を指摘します。
DVなど精神的暴力といったものを理由に (子を連れて)自分の国に戻るというような事例でも、最終的に子どもが(元の国に) 返還されなければならない」(ハーグ条約の問題に詳しい 伊藤和子 弁護士)
今回の事態が急展開したのは今年4月。日本人女性がアメリカの永住資格更新のためハワイに渡航し、その際、当局に拘束されてしまいました。元妻が被告の裁判、父親の心境も複雑です。
「仕事に行くたび、いつも拘置施設の前を通り、彼女のことを思う。こんなことが起きてはいけなかったと思う」(娘の父親 、モーゼス・ガルシアさん)
娘は母親が拘束された経緯について理解していて、クリスマスの願い事は、ママが帰ってくることにしたと、手紙の返事を書いたと言います。
結局、誰ひとりとして幸せではないわけですよね、こういう結果で。家族間の問題について刑事罰という形で国家が強制力を持って介入して、そして家族の中の1人の当事者を有罪にしてしまうということが、果たしていいのかということは、よく考えてみなければならない」(ハーグ条約の問題に詳しい 伊藤和子 弁護士)
日本人女性は「夫から自分への暴力があった。娘を残していくわけにもいかなかった」と主張しています。現地21日にも言い渡される判決、有罪なら最大で12年半の禁固刑などが科せられます。(21日18:02)

13年前