毎日新聞「児童虐待の現場から/6 離婚後も協力を」

児童虐待と離婚、単独親権の関連性については、
私たちも積極的に問題提起してきたため、
ようやく社会的な関心が高まってきました。
この記事も離婚と親権の観点から虐待問題をとらえた点で
視点がこれまでのものと違った切り口になっています。

http://mainichi.jp/kansai/news/20100906ddn041040012000c.html

救え幼い命:児童虐待の現場から/6 離婚後も協力を
◇一人親、手を上げる前に

「息子さんの体にあざがあったという情報があります」。今年2月、京都市の主婦(38)は電話で告げられた。前夫(48)が引き取った長男(10)と長女(7)が通う静岡県内の小学校の教諭からだった。

前夫は結婚当初から家庭で敬語を使うよう強制し、ささいな失敗に激しく怒った。しつけにも厳しく、子どもにも手を上げた。精神的に耐えられず離婚を決意。子どもは引き取るつもりだったが、長男が転校を嫌がった。前夫は子どもと暮らしたいと懇願し「しかり方を改める。子どもに月1回会わせる」と約束したため、まかせることにした。

ところが前夫が約束を守ったのは最初の半年だけ。次第に面会に難色を示し、学校が長期休みの時しか会わせなくなった。この夏休み、1日だけ会えた長男は「お父さんにはよく怒られるけど、謝っておけば大丈夫だから。まだ我慢できる」と話した。前夫に「虐待」を問いただしたり、親権者変更を求めれば、逆上して子どもが更に危険になる気がする。「次に会えるのは冬休み」と涙をぬぐった。

■   ■

7月初め、東京都内の公園で、幼い兄弟が小川の水を浴びて遊んでいた。2人を見守る両親のそばには、離婚後の親子の面会を仲介する「NPOびじっと」(横浜市中区)の古市理奈理事長(39)がいた。離婚した夫婦の対立が激しいと、子どもの面会で協力できない。間に立って調整するという。

虐待防止が活動目的の一つで、「一人親はストレスがたまりやすい。手を上げてしまう前に、もう一人の親にSOSを発信して」と呼び掛ける。面会では親子でプールに入るなど、できるだけ子どもの体をチェックする機会を設けるという。「離婚しても父と母が子どもの養育にかかわり、成長を見守ることが大切」と訴える。

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「お母さんにはいつでも会っていいよ」。奈良県の会社員男性(39)は長女(10)と長男(5)にこう話している。離婚して子どもと暮らす父子家庭だ。

元妻(37)は子どもに厳しくあたった。甘えてまとわりつくとたたいたり、怒鳴ることも日常茶飯事。精神的に不安定で、約4年前、子どもを連れて家出した時、男性から離婚を申し入れた。親権を求めたが、家裁の審判で「子どもが幼い」と親権は元妻に。それから2年後、大阪高裁の判決で元妻の体罰などが問題視され、ようやく子どもを引き取れた。

親権は得たが「子どもには母親の姿を知って育ってほしい」と、月1回以上、泊まり掛けで元妻に会わせている。「今度、お母さんと会う時に着て行く服を買おう」などと、元妻との面会を嫌がっていないと態度で示すようにしている。

「行ってきまーす」。元気よく母親の元に向かう子どもたち。近所からも「今どき、近所のおっちゃん、おばちゃんとこんなにしゃべってくれる子はおらん」と可愛がられている。【児童虐待取材班】=つづく

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14年前