長崎新聞:42年ぶりに涙の再会 交番の巡査長が親子の絆つなぐ

42年ぶりに長崎で涙の再会 交番の巡査長が親子の絆つなぐ

(右)父が娘を捜し歩き続けた小浦海岸沿い。父との写真を手に思い出を話す女性の表情は喜びであふれていた=長崎市小浦町(左)宮崎巡査長

42年間にわたり生き別れになっていた父と娘が8月初旬、長崎市内の一人の若い警察官の手助けで再会を果たした。親子は「奇跡を起こしてくれてありがとうございます」と厚意に感謝している。

再会を取り持ったのは稲佐署地域課巡査長の宮崎栄一郎さん(35)。8月2日夜、宮崎さんが勤務する福田交番に、横浜市の無職、海部正之さん(83)が突然訪ねてきた。「娘に会いたいがどこにいるのか分からない」。そう切り出すと涙を流して協力を求めた。

娘は、海部さんが42年前に離婚した元妻との子。別れてから、元妻の地元の長崎に移り住んでいた。

娘からは16年前に一度だけ電話で連絡があった。娘は、元妻が亡くなり遺品を整理する際、海部さんの連絡先を見つけたという。海部さんはそのとき初めて 娘が結婚し、子どももいることを知った。海部さんが「もうすぐ引っ越すからこの電話は使えなくなる」と言うと、娘は自分の電話番号を教え「また連絡して」 と言った。しかし海部さんは耳が遠く、番号を聞き間違えてしまった。

再び音信不通に。月日は流れ、年を重ねるにつれ海部さんは「娘に会いたい」との思いを強めた。そして当てもなく長崎に来て、娘が住んでいると言っていた小浦町を捜し歩いた。

「2日間歩き、人に聞き回ったが見つからない。どうしても会いたい」

話を聞いた宮崎さんは、小浦町に住んでいるらしいという情報を頼りに4時間近く資料を探し、同じ名前の女性(53)を見つけ出した。個人情報保護のため 自ら女性に連絡し、事情を説明した。「父に間違いありません」。女性はすぐに海部さんの宿泊先のホテルに駆け付け、親子は泣きながら再会を喜んだ。

「大きくて力強い」父の手が大好きだった。小学5年生の時に離れ、記憶は薄れても、手の感触を忘れたことはなかった。「お父さんの手大好きだったんだ よ」。胸に秘めていた思いを伝えた。別れ際、久しぶりに手をつなぎ、そのぬくもりを感じながらJR長崎駅まで送っていった。

父が自分を捜し歩いた小浦海岸。女性は再会を振り返り、2人で納まった写真を手に「ずっと会いたかった。まさか来てくれると思わなかったのでうれしかった」とほほ笑んだ。

「あの人がいなかったら会えなかった。感謝しています。そう伝えて」。海部さんは長崎をたつ前、宮崎さんへのお礼を女性に託していた。「いい結果になってよかった」と宮崎さん。親子は今も連絡を取り合っているという。

【編注】宮崎栄一郎さんの崎は、崎の大が立の下の横棒なし

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