読売:民法改正 協議推進を明文化

民法改正 協議推進を明文化

読売online 2011年8月16日

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民法が改正され、離婚時に、別居する親と子の定期的な「面会交流」や、養育費の支払いについて親同士が協議することを推進する規定が新たに盛り込まれた。

別れて暮らす親子が面会しやすくなると見られるが、協議が義務づけにはならないなど課題も多い。

8月上旬の日曜日。親権を争って離婚調停中で、1年半前から息子(7)と別居しているさいたま市の母親(47)は、東京都内の子ども向け施設で1か月ぶりに息子と再会した。工作をする息子に寄り添い、無邪気に話す様子に目を細めた。

2人の面会には、「NPOびじっと 離婚と子ども問題支援センター」(横浜市)のスタッフが付き添った。びじっとは、離婚後に別居する親子の交流を支援しており、面会時の立ち会いや連絡調整などを有料で行っている。

この母親は、「離婚でもめていて、夫とは直接連絡を取り合える状況にない。第三者に間に入ってもらえたので、息子と会えた」と話す。一方、現在男 児と同居する父親(44)は、「当初、母親に会わせたら息子は戻ってこないのではと心配だった」というが、今では「びじっとのルールに従って面会するので 不安がない。息子も定期的に母親に会えると分かり、安心している様子だ」と話す。

かつては、離婚したら別居する親と子は会わない、会わせないという考え方が多かった。最近は、別れて住む親が面会を求めるケースが増え、調停の申 し立てが増加している。とはいえ、子どもと暮らす親権者の意向もあって、調停の結果月1回以上の面会が認められるのは半数程度だ。

これまで民法に面会などに関する規定はなかったが、5月下旬の改正で、「離婚する時に面会や交流、養育費の支払いについて取り決めること」と明文化された。来年6月までに施行される。

早稲田大教授の棚村政行さん(家族法)は、「親との面会は子どもにとって大切で当然行うべきだという基本的な認識が定着するのでは。意義は大きい」と話す。

ただ、今回の法改正はこうした取り決めを促進するにとどまり、義務づけてはいない。日本では協議離婚が約9割を占め、当事者同士だけで離婚に至る ケースが多い。信頼関係を失った元夫婦が面会などについて合意するのは容易ではなく、「法改正の趣旨を周知し、面会や交流を実現していくため、離婚の届け 出の仕組みを変えるなどの施策が必要だ」と棚村さんは話す。

面会を支援する公益社団法人・家庭問題情報センター(東京)の常務理事で、臨床心理士の山口恵美子さんは、「子どもが別居する親に会いたがらない ように見えても、実は同居の親に遠慮しているというケースもある」と指摘する。「別れて暮らす親と会えることは、子どもが思春期を経て自立していくために も、とても大切なことです」

当事者だけで面会を行うことが難しい場合には、第三者による仲介が役立つが、料金がかかるほか、支援団体が大都市にしかないなどの課題がある。び じっとの理事長、古市理奈さんは「離婚が避けられないとしても、その後の子どもとの交流について考えるのは親の責任。面会の大切さを教える場を設けるなど の対策が求められる」と話す。(小坂佳子)

養育費の取り決めも

養育費がきちんと支払われることは、離婚で経済的に苦しくなったひとり親家庭の子どもにとって重要な問題だ。今回の民法改正で、別れて住む親からの支払いが進むことが期待されている。

2010年の国民生活基礎調査によると、母子世帯の平均所得は262万6000円で、全世帯の平均所得549万6000円の半分に満たない。ま た、全国の母子世帯を対象とした06年度の調査では、父親と養育費の支払いについて取り決めている割合は39%だが、実際に支払われている割合は19%に 過ぎない。定額の養育費を受け取っている母子世帯への平均支払い額は月約4万2000円。

家庭問題情報センターが厚生労働省の委託で07年から設置している「養育費相談支援センター」(東京)では10年度、前年度より3割以上多い約 8500件の相談を受けた。中でも「養育費が減らされた」「支払われなくなった」といった相談が増えており、同センター長の鶴岡健一さんは、「景気の悪化 で養育費の支払いにも影響が出ているのではないか。払わない人たちに、どのように支払いを働きかけていくかが課題だ」と話す。

離婚時に養育費について取り決めることを促す規定が民法に盛り込まれたことについて、母子家庭の支援を行っているNPO法人Wink(東京)理事 長の新川てるえさんは、「義務づけではないので、どの程度効果があるか疑問だ」と話す。その上で、「法改正を契機に、離婚しても、養育費の支払いなど子育 てには責任を持たなければならないという認識が広まればいい。これまで養育費を支払わず、面会もしてこなかった親が、責任を果たすきっかけになれば」と話 す。

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年25万件台で推移

人口動態統計によると、09年の離婚は約25万件。過去最多だった02年の約29万件からは減っているが、ここ数年は25万件台が続いている。婚姻件数は年間約70万件にとどまっており、離婚の「一般化」がうかがえる。

また、離婚時に子どもがいるケースは約6割。離婚後の子どもをめぐる紛争は増加傾向にあり、司法統計によると、09年に家庭裁判所が受け付けた面 会交流に関する調停の申し立ては約6900件と、2000年の3倍近くに増えた。養育費請求の調停の申し立ては、09年が約1万8500件で、2000年 の約1・5倍に増えた。

2011年8月16日  読売新聞)
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