毎日JP:(社説)居所不明の子供 どこまでも守る姿勢を

社説:居所不明の子供 どこまでも守る姿勢を

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110818k0000m070135000c.html

住民登録があり、学齢期の子供がいるはずなのに学校には来ず、どこにいるかわからない。そうして1年以上居所不明の小中学生が全国で1183人に上る。文部科学省の学校基本調査で出た今春の数字で、前年の約3.6倍という。

驚く急増ぶりだが、前年までの全国の調査や報告がずさんだったためというから、さらに驚く。

文科省によると、1年以上居所不明の小中学生は、教育委員会がその「学齢簿」(義務教育段階の児童生徒の基本資料)を別に管理し、毎年の学校基本調査に数を報告することになっている。

しかし調査の形骸化が指摘されるようになり、文科省は今回、調査と報告を徹底するよう通知した。その結果、前年の326人が、一気に1000人台になった。データには大震災被災3県は入っていない。

居所不明になる理由には貧困による債務逃れ、家庭内暴力、虐待の発覚などさまざまあるとみられるが、社会とのつながりを断たれた子供の心身の不安定さや危険、不利益は計り知れない。一方的に就学機会を奪われた子供は、将来のための基礎的な学力も心配だ。

調査が不徹底だったのは、現場の問題意識の濃淡だけではなく、不明の子供たちを社会の諸機関が連携して救うシステムが十分機能していないことの表れである。

だが数字だけ出して、そこで足踏みしているのなら意味はない。学校だけに任せるわけにはいかない。今回の調査見直しを機に、追跡と救援の手だてを早急に考えたい。

いじめ問題についてもこれまでと同じような「見落とし」「見過ごし」の疑いをぬぐいきれない。

今月文科省がまとめた昨年度の小中高校などの調査では前年度比で3.5%多い7万5295件。今の調査方法では初の増加だが、文科省が事件が相次いだ昨年、潜在するいじめの早期発見のため全校アンケートを促した経緯がある。増加はそれを映している。だが、都道府県別には報告数字が大きくばらつき、取り組みの不徹底や差異をうかがわせる。

子供に関する各種調査の充実度は、社会が子供たちを常に見守り、その境遇改善に腐心していることを示すバロメーターでもあるのだ。

東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故をめぐってもいえるだろう。多くの子供たちが学校や地域、家族と離れた生活を強いられている。誠実な調査でその一人一人のさまざまなハンディ、不安をすくい取り、継続的で的確な支援を続けたい。

未来を担う子供たちが「しっかり見守られている」という実感を持ってこそ、復興の着実な一歩だろう。

毎日新聞 2011年8月18日 2時32分

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