「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第1回会合
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平成23年7月29日
27日,外務省において,ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第1回会合が開催されたところ,概要以下のとおりです。
この懇談会は,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する 条約(ハーグ条約)に関する関係閣僚会議における了解事項等を踏まえた同条約締結のための国内担保法案の作成に向け,外部の有識者等から広く意見を聴く場として立ち上げられました。
1.出席者
本日の会合には,座長を務めることとなった小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授のほか,棚村政行・早稲田大学法科大学院教授,藤原靜雄・中央大学 法科大学院教授,日弁連から大谷美紀子弁護士及び杉田明子弁護士,関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,文部科学省,警察庁)等の関係者が出 席しました。
2.山花政務官ご挨拶要旨
本年5月にハーグ条約の締結に向けた準備を進めることが閣議了解されたことを受け,外務省は法務省とともに国内担保法の作成作業を進めている。法 務省が司法手続部分につき法制審議会を開始したのに続き,外務省としても中央当局のあり方につき透明性を確保した議論を行うために本日懇談会を立ち上げる こととした。子の福祉に資するような良い制度の策定に向け政府一体となり議論を進めていきたい。
3.議事要旨(詳細の概要については,別途掲載予定)
(1)総論・中央当局として必要な権限や体制整備
- 中央当局は各締約国がハーグ条約の趣旨を実現するに際して極めて重要な機関であるともに,国際協力を行う役割も要求される。返還に関する司法判断と中央当局による対応は,ハーグ条約実施のための車の両輪。他方,種々の制約を踏まえ,実現可能な制度が必要。
- 中央当局の制度設計に際しては,国内各機関との連絡調整及び各行政機関間での横の連携をいかに確保するかが極めて重 要。中央当局の任務を全うするためには外務省にすべてを押し付けるのではなく,外務省が各府省庁の協力を得てこれらが有する知見を集めたオールジャパンの 対応が必要。
(2) 子の所在の特定及び個人情報保護との関係
- 中央当局が条約上の任務を遂行するにあたり,日本国内の各省庁や自治体から必要な情報を入手できないと,ハーグ条約締結に向けた制度設計は不可能。
- 子の所在の特定につき措置を取ることは,返還にかかる司法手続を実効的なものとするための鍵。中央当局がもつべき情報 が,中央当局にきちんと集まるよう,国内担保法に明確な権限規定を盛り込む必要がある。ハーグ条約実施のためという目的をはっきりとさせた上で根拠規定を 置く必要がある。
- 各行政機関等間の情報共有が必要となるが,実効的な情報共有の促進と個人情報の保護との両立につき十分議論する必要が ある。子の所在特定等にかかる情報の入手といった中央当局の権限については,担保法において一般的な根拠規定を置きつつ,個人情報の慎重な取扱いの担保方 法も十分考慮すべきである。
- 中央当局が得た情報をどこまで残された親(LBP:Left Behind Parent)に開示するかにつき議論が必要。任意の解決の促進の向けた最低限の信頼関係の構築のために中央当局として何をすべきか検討すべき。
(3)在外公館による支援
- 在留邦人への在外公館による支援という観点も関心が高い。また,常居所地国に返還した後の子のフォローアップも検討して欲しい。
(4)諸外国の法制度等調査等
- 各国の監護権に関する最新の法令,判例,実務等やDV保護法制や子供の保護についての制度につき,中央当局で調査収 集,翻訳の上,共通資料として実務家等の間で利用可能にすることを検討願いたい。このような知見の集約にあたっては,中央当局がすべて用意するということ ではなく,関係省庁,日弁連,研究者等のネットワークで対応にあたるべき。
(5)任意の解決の促進等
- 条約の理念としては,返還にかかる司法判断に至る前段階で,任意の返還や友好的な解決を得ることが最も望ましいもので あり,それにつき独立の条項で規定されたハーグ条約第10条は重い意味を持つ。他方,任意の解決を中央当局自身が行う義務を負うとの趣旨ではなく,最も適 当な機関にそれを担ってもらうことが中央当局の任務。
- 任意の解決の促進につき,外務省がノウハウを持つ立場にはないことは明らか。裁判所や調停協会等,これまでの調停の実務を担ってきた者が,ハーグ案件における和解を支援する組織を作っていき,これを中央当局が支援していく方が現実的ではないか。
4.配布資料
- (1)主要論点
- (2)参考資料
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