■論文冒頭より一部抜粋
離婚後の単独親権制度を採用する日本において、高葛藤の離婚家族で起きる「片親疎外」が深刻な問題となっている。
日本では「離婚は縁切り」とみなす伝統的家族観や「別居親は遠くからそっと見守るのが美徳」とする社会的通念が根強いためか、離婚後は「ひり親」で子どもを育てていくというイメージが世間に定着していると言っても過言ではなく、文字通り「夫婦の別れが親子の別れ」になってしまう場合も多い。
]離婚後だけでなく、高葛藤の別居にあたって一方的に子どもを連れ去り、もう片方の親と子どもの交流を断絶する「連れ去り別居」が頻発していることも深劾な問題である。
一方、欧米諸国では『児童の権利条約(児童の権利に関する条約)』(1990)の批准と前後して、離婚後の共同養育(共同監護・共同親権・共同親責任)制度が整備されている。子どもの健全な成長のために、両親は離婚後も「親子不分離の原則」(第9条第3項)や「共同親責任の原則」(第18条第1項)に則した共同養育の「義務」を負うのである。実は、日本も『児童の権利条約』は批准しており(日本の批准は1994年)、協議離婚の際に子どもと別居親の面会交流について定めることを提案する民法改正試案も公表されている(法務省、1994、1996)。
しかし、いまだに民法改正に至っておらず、離婚後の共同養育制度の実現には程遠い現状と言わぎるを得ない。
現在の民法では面会交流に関する明文化された規定が存在しないため、離婚後ないし別居中の「片親疎外」は事実上野放しになっており、離婚紛争時の子どもの「奪い合い」は次第に熾烈化している(棚瀬、2010)。
実際、『司法統計年報』(2008)を参照すると、平成20年度の面会交流紛争の事件数は10年前と比較して3倍以上に急増しており、「片親疎外」への対策が喫緊の課題といえる。ところが日本では、専門家のあいだでも「片親疎外」の問題はほとんど知られていない。
そこで本稿では、「片親疎外」を大会テーマとして行われたAFCC第47回大会での議論を報告し、「片親疎外」をめぐる最新の話題を紹介したい。
(以下、論文PDFにつづく)
論文:「片親疎外」に関する最新情報