子どもの権利条約に基づく第2回日本政府報告に関する日本弁護士連合会の報告書

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F 国境を越えた子どもの奪い合い(第11条、第35条)
夫婦間の子どもの奪い合いにより、海外から日本に連れてこられた子ども、及び日本
から海外に連れだされた子どもの取戻しを容易にするため、国際的な子の奪取の民事面
に関する1980年のハーグ条約に加入すべきである。

237. 別居又は離婚した夫婦の一方が子どもを国外に連れだした場合、他方の親は、多くの
場合、国際的な子の奪取の民事面に関する1980年のハーグ条約により、子どもを取
り戻すことができる。すなわち、子どもを奪われた親は、自分の居住国で申立をすれば、
申立は、子どもの居住国に送付される。そして、子どもの居住国は、子どもの返還のた
めにすべての必要な措置をとる。この条約の締約国は50か国以上である。
ところが、我が国は、この条約の締約国ではないため、外国から連れてこられた子ど
も、及び外国へ連れだされた子どもを取り戻すことが最も困難な国となっている。現に
外国人配偶者が日本人配偶者からの子どもの取戻しに成功した例は、1件のみが公表さ
れている(最高裁1978年6月29日判決)。これに対して、失敗した例としては、最
高裁1985年2月26日判決、東京高裁1993年11月15日判決等がある。これ
らの判決は、子どもが日本に連れてこられてから長い時間が過ぎていることを理由のひ
とつとしているが、そもそも子どもを奪われた親は、自分で子どもを探し出し、裁判を
起こすしかなかった。
このような不都合を避けるため、1980年のハーグ条約が作成されたにもかかわら
ず、我が国は、この条約の締約国になっていないのであるから、子どもを連れ戻すこと
ができなかった責任は、もっぱら日本政府にある。あるマスコミの報道によれば、米国
から日本に連れだされた子どもを取り戻せない米国人の親たちは、日本政府を相手にク
ラス・アクションを起こすことも検討している
(http://www.asahi.com/english/weekend/K2002012700081.html) 。

13年前