外務省:「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」 に関するアンケートの実施結果について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/2/PDF/020201.pdf

「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」
に関するアンケートの実施結果について

平成23年2月2日
外務省子の親権問題担当室
1.アンケートの実施
ハーグ条約に関する検討作業の一環として、より実証的・網羅的な調査を行う必要があると
の観点から、本省及び関係在外公館(※)のホームページを活用し、国際的な子の移動に関す
る問題の当事者となった経験のある我が国国民を対象にアンケートを実施。
(※)ハーグ条約締約国の大使館と在留邦人数1000人超の在外公館(計121公館)に掲載指示。
2.結果概要
5月25日から11月末までの回答件数は64件。
各問に対して回答者から得られた意見の概要は以下のとおり。
問1 国境を越えた子の移動に関する問題の当事者となり、以下のような経験をしたことはあり
ますか。
・国境を越える形で子を連れ去られたり、やむなく子と一緒に移動せざるを得なかったこと。
・外国で裁判をして、裁判所の命令等により国境を越える移動に制限が加えられたこと。
【回答の概要】
●事案別の内訳
・子を連れ帰った事案:18件
・子を連れ去られた事案:19件
・外国の裁判命令等により移動の制限を受けている事案:27件
●関係国の内訳
米:26件、豪:9件、加:7件、英:3件、仏:1件、その他(関係国不明等):18件
問2 ハーグ条約の存在やその内容をご存知でしたか。
【回答の概要】
・知っていた/知っている:41
・少し知っていた/知っている:8
・当事者になるまで知らなかった:14
・その他:1
問3 これまで我が国がハーグ条約を締結していないことについてどのようなご意見をお持ちですか。
【回答の概要】
同問に対して、我が国がハーグ条約を締結すべきという考えを明示したものが22件、締結2
するべきではないという考えを明示したものが17件寄せられた。
●条約を締結すべきとの意見例
・日本人の国際結婚とその破綻が増加する中、問題解決のための国際ルールとなっている条約
締結は必要。
・子を連れ去った方が有利という状況を変える必要あり。一方的に子を拉致するような状況を
日本はこれ以上放置すべきではない。
・日本は海外で子の拉致を擁護する異常な国と見られている。
・先進国として条約の締結は必要。国際社会から見れば遅れている。
・現状のままでは日本は子の連れ去りを防止できず、むしろ助長している。条約は、子の連れ
去りへの抑止として必要。
・国境を越えた子の連れ去りでは個人の力に限界あり。関係国の協力無くして、自力では問題
を解決できない。
●条約を締結すべきではないとの意見例
・条約は、日本の文化、習慣、価値観、感覚等になじまない。
・外国でのDV被害や生活苦から避難するため、日本への連れ帰りは最後の手段として必要。
国民を守る手段として、日本は条約を締結すべきではない。
・外国で法的解決を図ることになれば、日本人親に困難が伴う(裁判に伴う高額な弁護士費用
等金銭的負担、言語の壁、日本人親に対する不利な判決(日本への偏見)等)。
●その他の意見例
・子の福祉や国民の保護、国民の利益を第一に考えて対応してほしい。
・適切に法律(共同親権)が整備されない限りは、現状のままでいるべき。
問4 日本がハーグ条約を締結することになれば、ご自身又は類似の境遇に置かれている方々にど
のような利益・不利益があると思いますか。
【回答の概要】
●利益として述べられた意見例
・連れ去られた子を連れ戻すことができる。
・子を連れ去る者の「逃げ得」がなくなる。安易な子の連れ去りの抑止力となる。
・子が連れ去られても、子の所在発見等で我が国や外国の関係当局の協力が得られる。
・外国にいる子との面会交流のため関係当局の支援が得られる。
・外国裁判所等による移動制約(保証金、外国人親の同意取付け等)が緩和され、日本への帰
国(里帰り)が可能になる。子が両国間を自由に行き来できる。
・外国の裁判所で争う機会が減り、負担(裁判期間、弁護士費用等)が軽減される。
●不利益として述べられた意見例 3
・外国でDV等の被害を受けている人の逃げ道がなくなる。
・外国で裁判が行われることになり、外国人親の要求(外国での生活継続、共同親権の下での
面会交流等継続的な関係維持、養育費の負担等)に有利な判決が出され、それに応じざるを
得なくなる。
・(子を連れ帰り)日本で平穏に暮らしている人の生活が脅かされ、外国に連れ戻される危険
が出てくる。
問5 その他ハーグ条約や国際的な子の連れ去り問題についてご意見があれば、お書きください。
【回答の概要】
●政府の取組に関して述べられた意見例
・日本政府には子の連れ去り問題に関する適当な相談窓口がない。相談窓口の設置等対策を強
化すべき。
・自国民保護の観点から、日本政府は海外で問題に直面する国民に対する支援を行うべき(D
Vの場合における特別な支援の実施等)。
・日本からの連れ去りを防止するための対策を強化すべき。
・国際結婚をする国民にハーグ条約について注意喚起し、認識させる広報が必要。
●外国の裁判に関して述べられた意見例
・DV被害については裁判で立証し、それを使って親権裁判を有利に進めることも可能。裁判
回避の本当の理由は、本人の語学力不足や外国で自立できないためではないか。
・子を連れ帰る日本人親がいるせいで、外国に残る日本人親が裁判等で被害を被っている。
・外国の裁判には高額の費用がかかり、裕福でないと難しい。言葉の問題もある。日本に帰り
たい人は、ある程度の覚悟の下で、子を連れ去るしか手段はない。
・離婚成立後、外国の裁判所は、薬物乱用、酒乱等により子の監護者として適当でない親であ
っても、共同親権を認め、定期的な面会を命じる。面会に応じなければ日本人親の監護権が
取り上げられ、刑務所に入れられる場合もある。
・外国で裁判をして母子が当該国に残る場合、経済的に自立して生活するのは困難。
●その他意見例
・条約の締結と同時に、日本も共同親権の導入も含め民法等を変えるべき。
・離婚後も子には両親と会う権利があり、保証すべき。日本国内における共同親権や面会交流
権の法制化を望む。
・国際離婚に関する特別法を作ってほしい。
・ハーグ条約は過去の事案に遡及する効果を持たないが、既に生じている事案等日本が条約を
締結しても対象とならない案件についても政府の支援が必要。
・司法機関を始め、連れ去り勝ちを容認する日本の現状に問題がある。
(了)

13年前