https://www.kyobun.co.jp/article/2024121706
水野 拓昌
教育新聞 報道記者
父母対立で疲弊…学校対応指針や支援機関など提言 共同親権で要望書
記者会見でアンケート結果を説明する松村代表(中央)=撮影:水野拓昌
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民法改正によって、離婚後も父母双方が子どもの親権を持つ共同親権が2026年までに施行されるのを前に、「子育て改革のための共同親権プロジェクト」は12月16日、別居や離婚といった状況にかかわらず父母を対等に扱うことを学校に周知するよう求める要望書を、阿部俊子文科相、三原じゅん子こども政策担当相宛てに提出した。記者会見も開き、全国の市区町村教育委員会や私立学校などを対象にしたアンケート結果を基に、学校で親権制度の法的理解が浸透していない現状を指摘。同プロジェクトの松村直人代表は「別居の親が子どもに会えず、学校行事に参加できない実態がある」と訴えた。
同プロジェクトは、別居や離婚により、親子が引き離された体験を持つ親の団体。この日は衆議院第二議員会館で文部科学省、こども家庭庁の担当者に要望書を手渡した。要望書では、進学や転校で両親権者の同意を必須要件とすることや、義務教育の原簿となる学齢簿の保護者欄を2枠以上設定し、父母双方の情報を必須事項とすることを求めている。また、一方の親による親子の引き離しが子どもへの虐待であるとの認識に立ち、周知することや、こうした親子の支援先を明確にし、父母間の対立による学校の負担を軽減することも要望している。
要望書提出後の記者会見で、松村代表は「別居の親を学校から排除しようと、父母に差をつけようとするからもめることになる。学校は父母を対等に扱うという立場で、それ以上は対応しないと言い切ってくれれば、一方も無茶は言えない」と強調。また、「父母間の対立は意見調整を図る機関がないと学校側も困る」と、原則的な対応を明示したガイドライン策定や支援組織を明確化することで、学校側の負担を減らせると提言している。
さらに記者会見では、全国の教育機関に対して行ったアンケート結果を報告。7月28日~9月13日、全国の市区町村教委や私立小中学校、インターナショナルスクールの計2811件の組織を対象とし、188件の回答を得た。回答率6.7%。その結果、別居・離婚後の父母への対応、親子への支援は全国的に一貫性がないことが明らかになったと指摘している。
具体的な項目でみると、別居の親が学校行事(入学式、卒業式、保護者会、保護者面談など)の参加を求めた場合の対応について、「親権者であることが確認できた場合のみ応じる」10%、「親であることが確認できた場合は応じる」32%、「親であることが確認できても応じない」1%、「その他」56%――という結果だった。松村代表は、別居の親の参加について、学校が同居の親の判断を優先している現状があるといい、これが父母間の対立に学校が巻き込まれる要因となり、「教職員の相当な疲弊が危惧される」との懸念を示した。
また、別居の親への情報提供(通知表、体力測定結果など)の対応では、「親権者であることが確認できた場合のみ情報共有する」19%、「親であることが確認できた場合は情報共有する」19%、「親であることが確認できても情報共有しない」6%、「その他」56%――という結果だった。
進学時の共同親権者の同意については「多くの組織でその必要性の認識が低いことが判明した」と指摘。父母双方の同意が必要との案内をしている例や、同意の確認を既にしているという「確認済み」との回答が11%で、「確認予定」は14%。一方、こうした案内や確認などを「予定なし」とした回答が30%だった。「その他」は45%。
「その他」には「別居状態でも父母双方の同意が必要とは知らなかった」「そうした事例の経験がなく、考えたことがない」「検討したことがない」との回答があり、課題を認識していない組織があることが浮き彫りとなった。その中では、私立小学校は「確認済み」が27%と高く、一方で私立中学校では「予定なし」が46%だった。