離婚後の面会交流継続、養育費支払いわずか3割 専門家指摘「子の成長、別れても父母に責任」

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12/5(木) 18:31配信
京都新聞

子どもの意見を聴く大切さを繰り返した大谷美紀子さん(右上)=京都市中京区・立命館大朱雀キャンパス

 今年5月に民法が改正され、離婚後の父母の共同親権が可能となった。子と別居親の面会交流を巡る争いや、養育費の不払いなどの問題が続く状況に、親子交流の広がりを期待する声がある一方、別居親による支配の継続など不安も根強い。親子面会交流や、親権とDVなどの問題に取り組んできた専門家による企画が京都市で相次いであった。親子を巡る現状と、改正から2年以内とされた法施行の課題を考える。

【写真】離婚後の共同親権の課題を指摘する専門家

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 「子どもの最善の利益は誰が判断するのか」

 一般社団法人「面会交流支援全国協会(ACCSJ)」の創立5周年記念シンポジウムが京都市で開かれた。弁護士で前国連子どもの権利委員会委員長の大谷美紀子さんがオンラインで基調講演を行い、離婚後の監護や交流における親と子の関係について問いを投げかけた。

 大谷さんは、子どもが保護を受ける対象から、「子どもの権利条約」(1989年採択)によって大人と同じ権利の主体として位置付けられた歴史を振り返りつつ、「子どもは身体的、精神的に発達し続けている段階で、保護の必要性はなくならない。保護と権利行使のバランスは難しい」「面会交流は子どもの権利だが、難しいのは親の権利でもあること」と指摘した。

 父母が葛藤を抱える状況があると、別居親と子の面会交流が難しいケースが多く、国内の一人親世帯で面会交流が継続して行われているのは約3割にとどまっている。養育費の受け取りも約3割に限られ、別居親が養育責任を放棄している現状がある。

 民間の支援団体が離婚後の親子交流を支援しているが、地域的に偏りがあり、支援内容も異なっている。ACCSJは「子どもの気持ちが尊重され、安心・安全な面会交流」を広げようと設立、支援団体のサポートに取り組んできた。

 ACCSJとしては親権の問題に特定の立場を示していないが、代表理事を務める二宮周平立命館大名誉教授は民法改正と面会交流支援について報告した。離婚後に共同親権が選択できることについて「離婚後も父母には子の成長・発達に責任があることが明らかになった。父母が話し合い、子の意思を聞き取り配慮しながら決め、子と別居親との交流や養育費の分担を継続することで、子は離婚しても自分のことを大切に思ってくれていると自覚でき、安心する。父母の養育を受ける子の権利が充足される」と、民法改正の意義を示した。

 さらに、民法に「親の責務」が規定され、「子の人格の尊重」「(父母が)互いに人格を尊重」と明記されたことを評価した。親子間、父母間の対等性が盛り込まれ「子を争いのカードとするような発想や言動を抑える根拠となる」との法制審議会委員の発言を挙げ、「子どもの意見が大切になる」とした。

 「子のための親子交流」の課題として▽虐待やDVがある事案で共同親権が強要されない仕組み▽子の看護教育などの分掌(分担)の定め▽合意形成のための「親ガイダンス」の実施―などを挙げた。面会交流において「支援者は子どもの味方。支援の過程で子が自分の気持ちや思いを支援者に語ることもある」と役割の大きさをアピールし、「子どもと父母が安心して利用できる支援団体を全国に広げよう」と呼びかけた。

 大谷さんは、「世界人権宣言」(1948年)に記された「家庭が干渉されない権利」によって親も子も面会交流も妨げられないが、「子どもの最善の利益に反する場合は除外される」ため、「最善の利益が面会交流の制約に使われやすい」とした。

 子どもの権利条約で「最善の利益」と並ぶ原則とされた「子どもの意見が聞かれる権利」の大切さを強調し、「子に意見を聞くことは親同士の葛藤に巻き込まれるなど利益に反する」という考え方を否定した。「難しいことだが、やり方の問題であり、子どもの意見を聞くのが基本。意見を聞かずに決めてはいけない」と発想の転換を求めた。

 国による面会交流の環境整備や民間支援団体へのサポートを求めるとともに、「子どもが意見を持ってもいいんだ。自分の気持ちを大切にして意見を言ってもいいんだと思うようになり、支えてくれる大人がいると感じてもらえる社会に」と訴えた。

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 離婚後の共同親権 離婚後の親権は父母いずれかの「単独親権」だったが、民法が改正され、父母双方に親権がある「共同親権」の選択が可能になった。父母が協議して共同か単独かを選び、合意できなければ家庭裁判所が親権を決める。共同親権を認めない「子の利益を害する」例として「父または母が子の心身に害悪を及ぼす恐れ」などが挙げられ、不本意な形で共同親権が合意されないよう付則に「父母の真意を確認する措置を検討」と盛り込まれた。

 同居親による恣意(しい)的な監護や、子と別居親との面会交流の制限などに歯止めがかかり、父母双方が子育てに主体的に関与するとの期待がある一方で、「子どもの医療や進路などことあるごとにもめ事になり、同居親と子の負担になる」「DVや虐待から逃れる『子連れ別居』が妨げられる」などの強い懸念がある。共同親権であっても「日常的な行為」や「急迫の事情」があれば一方の親が決めることができるが、実際の運用には課題が残されている。

2週間前