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6/10(月) 6:00配信
デイリー新潮
世にも奇妙な物語(写真はイメージ)
離婚後も子供の親権を父親と母親の双方に認める「共同親権」の導入を盛り込んだ改正民法が5月に国会で成立した。父母が一緒に子育てに責任を持つことで「より子供の利益にかなう」環境整備へ期待がかかる一方で、「共同親権」ではカバーできないケースも現実には残されている。その代表例が、法律上は未婚の「不倫カップル」間で生じる子供をめぐるトラブルだ。
【写真を見る】子供たちの戸籍謄本に記された「認知」の文言と取材に応じた「明里さん」
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77年ぶりの見直しとなった改正民法は2026年までに運用が開始される予定で、現在の父母いずれか一方に親権が認められる「単独親権」から、今後は父母双方が親権を持つことも可能になる。
共同親権は「子供の利益」がいま以上に確保されることを目的の一つに掲げるが、DVや虐待の加害者側が親権を得て“負の連鎖”が続くことを懸念する声もある。しかし、それでも多くの夫婦にとっては「朗報」と受け止められているなか、「制度から取り残された状況で、不安だ」と漏らす女性たちも少なくない。
首都圏に住むシングルマザーの木口明里さん(仮名・40代)もその一人。明里さんがこう語る。
「私には現在、上から高2(長男)、中3(長女)、小6(次男)、小4(三男)の4人の子供がいますが、子供たちの父親であるAさん(60代)は既婚者で、奥さんとの間にはすでに成人した子供(嫡出子)もいます。いわゆる不倫関係に当たりますが、もちろん私もこんな関係をこれほど長く続けるつもりはありませんでした。ただ交際の節目ふしめで彼が約束した『妻とは離婚する』との言葉を信じてしまい……」
不倫相手との間に子供を4人ももうけるというケースだけでも珍しいが、その子供たちをめぐる「現在の状況」がさらに複雑を極めているという。
「妻はいるが、交際してほしい」
明里さんがA氏との出会いをこう振り返る。
「Aさんと初めて会ったのは約20年前。当時、私は銀座のクラブに勤めていて、そこに彼がお客さんとして来店したのが始まりです。『実家が裕福なエリートサラリーマン』と紹介された彼は、確かに育ちの良さを感じさせる“寡黙な人”というのが第一印象でした。その後、彼が店に通うようになり、徐々に私とも打ち解けた関係に。しばらくすると彼から食事に誘われるようになって、さらにその後、交際を申し込まれるようにもなりました」
ただし、A氏はその前に「俺には妻と子供がいる」と打ち明けていたため、明里さんは当初、付き合う気などまったくなかったという。
「“不倫関係に未来はない”と考えていたからで、それでも彼の紳士的で優しい面には惹かれるところがありました。彼はその後も諦めず『付き合ってほしい』と言ってきて、笑って受け流しながらも彼と食事を重ねるうち、私のなかで彼への“好き”という気持ちが芽生えていった。ついに何度目かの交際申し込みの時、『私にきちんとした彼氏が見つかるまでの間なら』との条件付きで交際を了承したのです」(明里さん)
以降、A氏との間に4人の子供が生まれるが、結局、A氏は妻と離婚することはなかった。そればかりか、子供の「認知」に関しても明里さんを失望させたという。
「酒乱」癖
「彼は子供が生まれるたび、『妻にバレるから』といって認知は一貫して拒否してきました。ただ子供が1人、2人と増えていくたびに、彼が私の家で過ごす時間は増えていき、4人目の子供が生まれた後は、週の大半を私の家で過ごすようになっていました」(明里さん)
A氏との間に最初の子供を身籠もってすぐ、明里さんは銀座のクラブを辞め、以降はシングルマザーとして水商売以外の仕事に就いてきたという。A氏もこの間、明里さん側への経済的援助は欠かさなかったというが、ただ一つ、大きな問題が持ち上がる。
「交際期間が長くなるにつれ、彼の“酒乱”ぶりがひどくなっていったのです。何度も『お酒をやめて』と頼みましたが、しばらくの間は反省して断酒するものの、すぐにまたお酒を飲み始める――の繰り返しでした。最後のほうは酔って暴れたり、私に『死ね』などの罵声を浴びせたりと、子供たちもそんな彼の姿に怯えるようになり……。ついに堪えかねて、彼を家から追い出したのが2年前のことです」(明里さん)
この時に不倫関係は「清算」したが、A氏からの希望で「子供たちと会う機会は時々つくっていた」という。しかし長男と長女はすでに父親を敬遠していたため、会うのはもっぱら下の息子2人だった。
「誘拐」事件として警察に相談
そんななか、今年2月に事態は急変する。
「2月に入って、Aさんが突然、私が子供たちと暮らすマンションから歩いて10分程度のところに一人で引っ越してきたのです。彼と奥さんの関係は以前から『良くない』とは聞いていて、彼は『明里との関係は妻にバレていない』と言い張っていましたが、夫婦関係悪化の原因の一端が私や子供たちの存在だった可能性は否定できません。今回、奥さんとは別居する形で、“一人暮らしを始めた”と告げた彼は『やっぱり明里とヨリを戻したい』とも言ってきました」
不倫解消から2年以上が経過し、明里さんにはすでに新しい交際者が現れていたこともあり、A氏からの「復縁」要請はきっぱりと断ったという。
「予想外だったのか、彼は拒否されたことが不満だったようで……。すると3月に下の息子2人が彼の家に遊びに行ったところ、そのまま戻ってこなくなってしまったのです。彼を問いただすと『子供たちが“ココにいたい”と言っている』の一点張りで、息子たちを返そうとしない。すぐに警察に『誘拐ではないか?』と相談したのですが、『民事案件なので、われわれは介入できない』と取り合ってもらえませんでした」(明里さん)
そして4月に入り、さらに事態は新たな展開へ――。
十数年越しの「認知」の裏側
「4月下旬、彼の代理人弁護士が私に『(A氏が)4人の子供を認知した』と連絡してきたのです。驚いて子供たちの戸籍謄本を取ってみると、確かに私の知らないうちに彼が子供4人を数日前に認知していたことを確認した。突然の認知が、子供を返さないことを正当化する布石のように映り、怒りを覚えました。奥さんとの関係が冷え切り、私にも復縁を拒絶され、その腹いせや自分の寂しさを埋めるために子供たちを引き取ろうとしているのだとしたら許せません」(明里さん)
明里さんは現在、弁護士に相談してA氏側と子供たちの引き渡しについて交渉中というが、離婚問題に詳しいフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士はこう指摘する。
「今回のケースでいえば、子供たちの親権者は明らかに母親(明里さん)であり、子供を認知しただけで男性(A氏)がすぐ親権者となることはありません。男性の行為はすこし強引なものにも映り、母親が弁護士を立てて『子供の引き渡し』を求めて家裁に訴えれば(明里さん側への)引き渡しが認められ、子供たちを取り戻せる可能性は高いと考えます」
「不倫の代償」が子供たちにまで及ぶことがないよう願うばかりだ。
デイリー新潮編集部
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