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5/11(土) 21:01配信
OTONA SALONE
イラスト/shutterstock
「夫に子どもを奪われそうになったので、慌てて子どもを連れて実家に帰りました。でも、夫が何倍もうわてでした。弁護士を使って子どもを取り返されてしまい、今、私は月2回しか子どもと会えずにいます」と、田代はるなさん(仮名・37歳)。
離婚・別居時に、相手の承諾なく子どもを連れて家を出ていくことは「子どもの連れ去り」とも言われる。相手にとっては、ある日突然、配偶者と子どもが姿を消すという大変ショッキングな仕打ちだ。一方的に過ぎると非難されてもしかたがない行為ではあるが、DVがひどくて逃げざるを得ない、話し合いにならない相手だ等々、致し方ない理由はたくさんある。
はるなさんの場合は、相手が子どもの連れ去りを計画しており、それを阻止するための、いわば先手を打っての連れ去りだった。
【共同親権を考える#4】前編
出産後、夫に「ダメ母」とののしられる私。ワンオペでも子育ては楽しくて、私なりにがんばっていたのに
欲しくて欲しくて、努力して授かった子どもだった。
結婚後、しばらく子どもができなかった。不妊治療をして3年後、体外受精でようやく子どもが生まれた。
夫は、もともとモラハラの気があったが、出産後、それがひどくなった。
「待望の子どもに恵まれ、一生懸命子育てをしていたのに、夫は私のことをダメ母、と罵りました。育児に向いていない、おまえが育てたら子どもはダメになるなどと言い、メンタルクリニックに連れて行かれたことも。わざと私を怒らせるようなことをして興奮した声を録音したり、日々の細かなこともノートにつけられたりして、すごく窮屈でした」
それでも、子育ては楽しかった。人見知りの激しい子どもで、夫にも懐かないほど極度のママっ子。可愛くてたまらなかった。7か月で職場復帰し、子どもは保育園に預けながら仕事を家事・育児を両立させていた。ほぼワンオペだったと自負している。
一方、夫との仲は険悪になるばかり。夫はみなみさんの何が不満なのか、妻を貶めるような暴言ばかりを吐いていた。
「支配欲が強い人なんですよね。相手をコントロールしたいんです。それができるのが女性や子ども。私は一見、弱く見えるけれど、意外に頑固なところもあるので、夫は自分に従わない私がいやになったのではないでしょうか」
弁護士に頼りさえすれば誰でもいいわけではないだなんて、教えてくれなかった
子どもが3歳になったある日、はるなさんは異変に気がついた。年度替わり、新年度も引き続き子どもが保育園に通うためには、一定の手続きが必要である。夫が「俺がしておく」と言ったから任せたのだが、それがされていない。
「夫に『どうして手続きをしていないの?』と聞いたら、『子どもは俺が育てたほうが幸せになれるから、実家に連れて行く』と。すでに弁護士も頼んでいて、これからどちらが子どもを育てる親としてふさわしいか裁判所に決めてもらうと言われてしまいました」
はるなさんはわけがわからないまま、とりあえずこれが危機的状況であることだけは理解した。すぐさま自治体の女性相談に駆け込んだ。
そこで、このまま夫が子どもを連れて実家に帰ったら、そのまま監護権を取られてしまうと聞かされた。助言を得て、はるなさんは子どもを連れて自分の実家に帰った。夫の先手を打った形だ。実家は飛行機の距離である。
夫は怒り狂ったが、弁護士をつけていたから、1週間後には家庭裁判所に監護者指定・子の引き渡し調停の申し立てをしてきた。はるなさんも弁護士を探した。
「私の実家は田舎で、弁護士さんが少なくて。お願いしたのが、あまり家事事件にくわしくない方で、これが大失敗でした」
弁護士は「あなたはお母さんなのだし、こうしてお子さんと一緒に暮らしている。監護権は絶対に大丈夫ですよ」と言った。
たしかに、現在の家庭裁判所の運用だと、親権や監護権を決める際に「母性優先の原則」や「監護の継続性の原則(現在、一緒に暮らしているほうが有利)」などを元に判断されることが多い。とはいえ、「絶対」と言い切れるものではない。
「夫は、私が育児にいかに向いていないかを書き留めていたノートや私を怒らせたときの声の録音、そして自分で書いた大量の育児日誌を出してきて、自分こそが監護者にふさわしいと主張してきたのです。一方、私の弁護士は、私が母子手帳や保育園との連絡帳の記録、子どもとの写真などたくさん渡したのにそれを出してくれませんでした」
一審では、はるなさんが監護者だと認められたが、二審でそれが覆ってしまった。
前編でははるなさんが「負ける」までを振り返ってもらいました。続く後編では「負けた後に何が起きてしまうのか」を教えてもらいます。
ライター 上條まゆみ
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