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5/9(木) 13:51配信
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これまで日本では両親が離婚した際、どちらか一方が親権を持つ「単独親権」でしたが、父親母親ともに親権を持つ「共同親権」も選べるようにする法案の審議が国会で進んでいます。年間16万人を超える子どもが親の離婚を経験するなか、当事者の子どもたちが打ち明けた本音とは?
【写真を見る】離婚後の「共同親権」何が子どものために?日本では年間16万人を超える子どもが親の離婚を経験 当事者の子どもたちが打ち明けた本音【news23】
■「できるならまた会いたい」連絡するも 父親からの返事はなし
高校生Aさん「楽しく父と遊んだ記憶はあって、出来るならまた会って何かやりたいな」
そう話してくれたのは都内に住む16歳の高校生です。3歳の頃に両親が離婚し、今は父親と離れて暮らしています。離婚した当初、父親とは月1回は会う約束を交わし、連絡も頻繁にとっていました。ところが…
高校生Aさん「(メールで)『パパへ 元気ですか? 連絡ください。次はいつ会えますか?』とか近況も送ったりしているのですが、返信がない」
小学校高学年の頃から連絡が滞り始め、最近では返事すらないことも。次第に会える頻度も減っていきました。
高校生Aさん「不安だし、何を考えているのか。会いたいという気持ちがないのかなと気になったり」
親が離婚した未成年の子どもの数は、2022年で約16万人。家庭環境が多様化するなか、子どもをめぐるトラブルも相次いでいます。
Aさんの母親「一方の判断で養育費減らしてもいいとか、面会交流も減らしてもいいとか、そのあたりが離婚後の子育てをしたなかで、今の制度はとても弱いなと」
こうしたなか、期待を寄せているのが『共同親権』です。
高校生Aさん「『共同親権』になったら、会う頻度があがるかもしれない。学校のことだったり、友達のこととかも、どんどん話してみたい」
共同親権とは、離婚した父親と母親のどちらかが親権を持つという、これまでの単独親権に加え、離婚後も両方に親権を認める制度のことです。国会では現在、この共同親権を導入する法案の審議が進められています。
高校生Aさん「離婚しても、子どもからしたら親ということには変わりないので、両方の親と同じように接することが出来るようにしたい」
■恐怖の対象だった父親 「共同親権で危ない生活になってしまう」
離れた親に会いたいと願う子どもたちの新たな選択肢となり得る共同親権ですが一方で、導入に不安を募らせる子どももいます。
高校生Bさん「食事のときに父がものすごくフライパンを叩いていたという記憶がある」
そう話すのは、東日本に住む16歳の高校生です。小学生の頃、父親の家庭内暴力が原因で両親が離婚しました。当時の様子を絵に描いてもらうと、テーブルよりも父親の姿が大きく表現されています。
高校生Bさん「本来の縮尺ではないのですが、気持ち的にも恐怖の対象だった。テーブルとかよりも遥かに大きく(父親が)見えていた。真顔でカンカンカンカンって。一言発したら、そこから暴言のオンパレード」
離婚する際、父親から「数時間だけ」と言われ、会いに行くとそのまま数週間帰らせてもらえなくなったことも。こうした経験がトラウマになり、しばらくは“父親の影”に怯えていたといいます。
高校生Bさん「(離婚後)2~3年ぐらいはずっと思い出して、1人でトイレに行けなくなったり、ずっと母親にべったりくっついていないといけないみたいな。思い出すと手とか足とかが、話しているうちに震えてきて、もう二度と父親に会いたくない」
今回の法案では、父母が協議離婚で折り合えなかった際にも、共同親権にするかどうか、家庭裁判所が判断するとしています。一方、円満に離婚しなかったケースについて、適切に共同親権を行使できるのか不安の声が上がったため、親権を選択する際に「父母の双方の真意」を確認する措置を検討することなどを、法案の附則に盛り込みました。
しかし、DVや虐待、さらには言葉による精神的なDVのようなケースにも、裁判所が単独親権か共同親権にするか、適切な判断ができるのか懸念も残ります。
Bさんの母親「私たちはモラハラが強かったので、診断書とかがあるわけでもない。心に負った傷を誰が証明してくれて、誰が判断してくれるのか。そういう判断基準も曖昧なまま」
高校生Bさん「共同親権になると、学校の書類とかに、親2人のサインが必要になってくる。『書類にサインしてほしかったら俺に従え』みたいな危ない生活を強いられるのか、このまま安全な生活ができるのか、自分ではわからない」
■「共同親権」何が変わる?
藤森祥平キャスター:
今回の法案では、「親権について 子の利益のために行使する」と初めて明記されました。そして仮に法案が通ったとしても、離婚するケース全てが共同親権になるのではなく、単独親権か共同親権かを選べる仕組みになるといいます。
共同親権になった場合、父母の合意が必要になるのは▼住む場所 ▼進学先 ▼パスポート取得 ▼医療行為(緊急時は一方の親)などがあり、アルバイトは一方の親、髪を染めるのは個別の判断になるということです。
トラウデン直美さん:
片方の親に対して恐怖を感じている場合、連絡を取り合うことにリスクを感じます。
小川彩佳キャスター:
その都度、確認のために連絡をすることになりますからね。父母の合意が必要な場合と、一方の親だけでいい場合との線引きが難しいです。
カフェ店主・元外資系コンサル 影山知明さん:
子どもの年齢にもよりますが、基本的には子どもが自分で自分のことを決められる権利と能力を持っていると思います。仮に共同親権になったとしても、個別の事案に関しては、単独でも合意ができるという、柔軟な運用が必要になるのではないでしょうか。
■「共同親権」親の責任は
藤森キャスター:
共同親権の議論が活発になっている背景について推進派は、「子どもと別居親が会えない状況を防ぐ」「父母ともに責任を持つため」といいます。養育費を支払わない問題がありますが、父母それぞれが責任を持つことをはっきりさせるためだということです。
小川キャスター:
推進派は共同親権によって、子どもの利益が守られるといいますがいかがでしょうか。
トラウデン直美さん:
シングルマザーの友人がいるのですが、彼女もなかなか養育費を支払ってもらえない状況だといいます。子どもの成長のために必要だと訴えても、会えないし、自分の子だという認識もないのではないかという話もしていました。共同親権にしたいのかと直接聞いたことはないのですが、そうではないようです。選択肢が増えることはいいように聞こえますが、DVや虐待などの心配もありますので、一概には言えませんね。
■「共同親権」DVや虐待リスクどう排除?
藤森キャスター:
慎重派が懸念しているのは、「DV・虐待のリスクを見逃す恐れがある」という点です。家庭裁判所がDVや虐待があると判断すれば単独親権になりますが、リスクを見逃す恐れや、判断しきれないケースがあるのではないかといいます。
実は家庭裁判所では人員不足が問題となっています。現在、家庭裁判所では、親子の面会交流・養育費などをめぐる調停や審判の申立て件数が急増し、2022年は約4万4000件もあったそうです。このような状況で共同親権が導入されると負担がさらに増えることになります。
カフェ店主・元外資系コンサル 影山知明さん:
リスク懸念のある法案を拙速に進めている理由がわかりません。私の母が家裁の調査官をしていたのですが、家庭裁判所の仕事はとても大変です。
申立件数が急増しているなか、さらに共同親権が導入され、過去の離婚も申し立てができることになると、もう対応しきれるマンパワーがなくなってしまいます。そのような状況で、DVや虐待など、個々の繊細な事案を適切に判断できるのか、とても不安です。
小川キャスター:
共同親権によって利益を得られるパターンがある一方、DV、虐待に関しては命や人間の尊厳を著しく破壊する可能性があります。2024年4月1日に改正DV防止法が施行されたとはいえ、被害者を守り切れてはいません。共同親権の法案は、被害者をさらに不安にさせてしまうのではないでしょうか。
■離婚後の子どもに必要なサポートは
藤森キャスター:
イギリスでは親子の面会を社会全体でサポートしているそうです。親がDV等の問題を抱えている場合、▼DV親に対し、更生プログラムを受講させ、裁判所が改善を確認 ▼ソーシャルワーカーが複数回、子どもと面会をし、親と会いたいか意思を確認 ▼認証団体の監督下で親子が面会を行うそうです。
カフェ店主・元外資系コンサル 影山知明さん:
先ほど申し上げたように家庭裁判所だけで、全ての役割を担うことは現実的に難しくなっています。ソーシャルワーカーなど第三者の連携プレーが介在することで成り立つものだと思います。
そもそもの問題として、DVや虐待のようなことが起こらない社会を作ることを考えなければいけません。核家族という狭い関係のなかに閉じこもってしまうと、加害者も被害者も追い込まれてしまうことがあります。職場や学校以外の場所で人間関係をいかに作っていけるか、また受け止めることができる社会を作れるか、そのような観点が必要ではないでしょうか。
トラウデン直美さん:
家庭内で親が揉めていると、子どもは親の顔色をうかがってしまいます。影山さんのおっしゃる通り、親以外のコミュニティで安心して話ができる相手がいることはとても大事なことですし、そのための人材やコストをしっかりかけていく社会の姿勢も大事ですね。
藤森キャスター:
推進派と慎重派、それぞれの主張の大事な部分をうまく汲み取り、徹底的な議論を進めていただきたいですね。
■共同親権「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『共同親権』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.子どもへのケア どんなサポート体制が必要?
「カウンセラーの設置」…12.2%
「安全な面会をサポートする専門機関」…36.1%
「完全にサポートできるとは思わない」…48.0%
「その他・わからない」…3.7%
※5月8日午後11時25分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは9日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
影山知明
外資系コンサルティング会社出身のカフェ店主
出版業・地域通貨などにも取り組む
トラウデン直美
慶応大学法学部卒
県境問題やSDGsについて積極的に発信
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