「生き別れになった息子を救いたい!」探偵が心を痛めた 、元妻の呪縛と戦う父の一念

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4/28(日) 12:02配信
ダイヤモンド・オンライン

「協議離婚した元妻と暮らす息子が元気にしているのか、友達と楽しく遊べているのか、現状を知りたい」との依頼で探偵芸人は調査に入ったが(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 筆者は、吉本興業でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務めています。厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」(2021年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯の30.2%、父子世帯の48.0%。子どもと別居している親の8割近くは子どもと会えていないのが現状だそうです。今回は、離婚後、息子と面会できなくなってしまった男性からの依頼で子どもの様子を調査した結果、思いもしなかった調査依頼へ変更になったケースを紹介します。(探偵芸人 オオカミ少年・片岡正徳、登場人物は全て仮名)

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● 離婚後、1人息子と 面会がかなわない男性からの調査依頼

 離婚により親権を失ってしまった山崎伸二郎さん(37歳男性)は「協議離婚した元妻の恵梨香さん(39歳女性)と暮らす息子の優人くん(小学校2年生)が元気にしているのか、友達と楽しく遊べているのか、現状を知りたい」とのことで相談にみえました。

 山崎さんが事業に失敗したことがきっかけで離婚した後に、何度か面会交流の機会があったそうですが、そのうち優人くんが体調不良などと、恵梨香さんがいろいろ理由をつけて会わせてくれなくなり、もう1年も会えていませんでした。連絡先の電話番号も解約され、家も引っ越したようで、恵梨香さんの両親も居所を教えてくれず、連絡の手段が途絶えたため、優人くんが元気で楽しく暮らしているなら幸せを願って忘れようと決心して調査依頼に踏み切ったそうです。

 親権者(主に妻)が子どもを連れて居住地を変えて、父親を遠ざけるために消息不明になるケースはとても多いのです。そのケースでの“あるある”で、恵梨香さんの両親が何かしら手助けしているはずだと思い、張り込みを開始しました。

 張り込み3日目の土曜日朝8時過ぎに恵梨香さんと優人くんが車で現れました。2人で実家に入った数分後に、恵梨香さんだけが出てきて車に乗り込み発車しました。今回の調査目的は優人くんの状況調査ですので、優人くんが出てくるのを待ちました。

 それから恵梨香さんの母親が買い物に行って戻ってきたり、父親が庭の掃除をしていたりする様子は確認できましたが、優人くんは出てきませんでした。時間がたち午後7時過ぎに恵梨香さんの車が戻ってきて、優人くんを乗せて発車しました。

● 元妻と息子が暮らすアパートを特定 部屋から出た男性が思わぬ行動

 尾行の結果、恵梨香さんの自宅アパートを割り出すことができました。しかし、優人くんの状況が分かるような撮影ができていないため、張り込みを継続しました。

 朝になっても自宅からは誰も出てきません。お昼を過ぎて午後1時近くに優人くんが出てきましたが、一緒に40代であろう男性も出てきました。

 2人は近くの公園に行き、キャッチボールを始めました。これで楽しく暮らしている状況でも撮影できれば山崎さんも安心するだろうと思い様子を眺めていると、男性は優人くんに「下手くそ!」と怒鳴ったり、ボールがうまく投げられないと頭をたたいたりしていました。その様子を撮影しながら、とても大事にされているようにはみえませんでした。そして日常的にこういったことが行われているように感じました。

 私はすぐに山崎さんに報告しました。山崎さんは怒りを抑え付けながら、虐待の証拠を押さえる調査に切り替えたいと依頼内容の変更を希望されました。その時点から調査内容が変わりました。

 男性が優人くんに罵声を浴びせたり、グローブやボールを投げつけたり、優人くんの頭や背中をたたいたり、押し倒したりしている様子を撮影しました。

 キャッチボールを終えて帰宅したアパートからは、男性と恵梨香さんが優人くんを叱る怒鳴り声や、優人くんの泣き声などが録音できました。

 近所に住む人たちへも聞き込み調査をしました。その結果、複数の方々が証言をしてくれました。

 「毎日のように怒鳴り声と、子どもの泣き声が聞こえる」
「玄関前に数時間も男の子が立たされている」
「子どもを置いて2~3日男性と女性が出かけることがある」
「児童相談所の職員が行っても追い返されている」

 などなど、虐待の裏付けとなるような証言が得られました。

● 依頼者は親権変更を検討 弁護士に相談すると

 私は探偵の仕事として依頼者の求める証拠を押さえました。しかし目の前で小学生の男の子が暴力にさらされているのは、見るに耐えない光景でした。とにかく急いで山崎さんが親権を取り戻すことが必要と考え、虐待の証拠内容の報告とともに親権変更を勧めました。山崎さんもそのつもりだったようで、多くの親権変更を取り扱った弁護士さんに相談を始めたそうです。

 私は急いで報告書をまとめ、山崎さんに手渡しました。

 山崎さんが弁護士から聞いた話を、親権変更をお考えの方の参考になればと思い引用いたします。

 ○元夫婦の協議によって親権者変更は認められていません。子どもの親権は、子どもの現在の生活環境や今後の人生に対しても大きな影響を及ぼす重大な要素です。そのような重要なことを、親の話し合いだけでころころ変えることは妥当でないと考えられるためです。

 たとえ、離婚合意書において「子どもが小学校に入学したときに親権者を変更する」などと書いていても、当該文言に基づいて親権が移ることはありません。

 ○離婚後の親権者変更は可能で、協議離婚などでいったん一方を親権者と定めても、その後に今の親権者が不適格であるという事情が発生した場合には、法律上、一定の手続きを経て親権者を変更できるそうです。

 ○親権者変更調停

 家庭裁判所で、元夫婦(子どもの両親)が子どもの親権者について話し合うための制度で、「調停委員」と「調停官(裁判官)」が関与して、親権者の変更をすべきかどうか、話し合いを進めていきます。

 まずは、父母双方が合意する必要があり、それに伴い、本当に親権を変更してもよいといえるケースかどうか、家庭裁判所の調査官が子どもの状況を調査して妥当だということになれば、親権者の変更が認められます。

○親権者変更審判

 調停で父母が子どもの親権者変更について合意できない場合には、調停は「審判」という手続きに移行します。

 審判では、裁判官が親権変更の是非について判断することになりますが、裁判官は、子どもの生活環境等を実際に見聞きした調査官による調査結果で、親権者変更の是非を判断します。

● 息子とキャッチボールをしていた男の素性 親権者変更審判の行方は?

 探偵の仕事としては、調査報告をした時点で完了していますが、その後の結果が気になり、様子をお伺いすることはよくあります。

 山崎さんについても気になったので伺ってみると、優人くんとキャッチボールをしていた男性は、一緒に暮らす恵梨香さんの恋人でした。私が得た調査結果と児童相談所が把握していた内容が、虐待の証拠として合致していたため親権者変更に有力な判断材料となったそうです。

 親権者変更調停で抵抗していた恵梨香さんも、親権者変更審判では恋人男性が無職であり、かつ薬物使用で有罪となり執行猶予中であることも踏まえて、監護親としての妥当性が認められず、優人くんの親権者は山崎さんに変更されたそうです。

 法務省では、24年の国会に離婚後も父と母の双方が子どもの親権を持つ共同親権の導入を内容とする民法改正案を提出し、成立を目指す方針だと報道されています。早ければ25年に共同親権が導入される可能性もあります。

 さまざまな理由で不当に親権を剥奪されている方はたくさんいらっしゃると思います。子どもに会えないつらさ、親に会えないつらさは一刻も早く解決されるべきです。片岡探偵事務所がそんなあなたのお力になれれば幸いです。

 「単独親権制度で苦しむ人を減らす探偵」。点と点が線になる探偵トークでした。

 ※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。

オオカミ少年片岡

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