【法律相談】「親権は絶対に渡さない」 離婚する夫婦、未成年の娘の親権者がどちらになるかの判断基準は

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4/27(土) 15:15配信
マネーポストWEB

離婚時に子供の親権者となるのは夫か妻のどちらか(イラスト/大野文彰)

 離婚において大きな問題となるのが親権だ。離婚のきっかけが不倫だった場合、親権はどうなるのか。不倫した方が親権を取ることはできるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 娘夫婦には5才になる子供がおり、現在、離婚と親権についてもめています。娘は夫のパワハラやモラハラに耐えられず、不倫をしてしまったそうです。子供のことを考えて、離婚までするつもりはなかったそうですが、不倫の事実を知った夫が離婚話を持ち出し、「親権は絶対に渡さない」と言っています。不倫をした娘は親権を取ることはできないのでしょうか。(神奈川県・女性・59才)

【回答】
 離婚する夫婦に未成年者の子がいれば、親権者を決めなければなりません。話し合いで協議離婚する場合は、どちらか一方を親権者に指定して離婚届を提出する必要があります。夫婦の間で話がつかなければ協議離婚はできず、家庭裁判所の調停で親権者を決めるか、まとまらなければ裁判で親権者を決めて離婚することになります。

 ところが、裁判離婚は時間がかかります。急いで離婚する必要がある場合には、相手に妥協して協議離婚をせざるを得ない場合もありますが、娘さんの場合、特に急ぐ事情がなければ心配無用です。

 親権者選定の基準について民法は特に規定していませんが、親権には未成年者の監護・教育に当たる身上監護権と子の財産についての管理権が含まれています。子に特別の財産がない場合には、身上監護をする上でどちらが親権者になるのが子の利益になるかで判断されるからです。

 親側の事情としては、養育に対する意欲や愛情の程度、健康状態、経済的・精神的な生活環境等が重要です。子側の事情としては、年齢、性別、子のきょうだい関係、肉体的・精神的発育状況、従来の環境と適応性、環境変化への順応性などが問題になります。

 具体的には、別居が先行していれば、養育を継続することが重視され、特に事情がない限り、親権者は従来から養育していた親がなると思います。また、乳幼児の場合には、母親優先の原則があるといわれています。母親が親権者になることが多いのはこうしたところからでしょう。

 さらに、子の意思も尊重されなければなりません。きょうだいが一緒に養育されることも大切です。家庭裁判所は、こうした種々の事情から、子のために最も利益になる親権者を決定しますが、不貞があったことは重視されません。ですから親権者の帰属について譲る必要はありません。

 現在、国会で民法改正が審議されており、今後、共同親権制度が導入され、元の夫婦が共に親権者になることもできるようになりそうです。また親権問題で協議ができなくても、親権者指定の手続きをとれば離婚できるようになります。

【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座。B型。

※女性セブン2024年5月2日号

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