【子ども連れ去り】その実態「居場所がわからない苦しみ」突然家から閉め出された女性 元夫は虐待を主張…女性は親権を得られず「こんなことがまかり通るのは絶対におかしい」

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  • 社会

24/03/21 15:30

特命取材班 スクープ

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2024年03月20日(水)放送

 我が子に会えない。『子どもの連れ去り』をめぐっては、国内で少なくとも約500人が被害を訴えている(NPOキミト調べ)。子どもを連れ去られた側の過酷な実態に迫った。

突然の子どもとの断絶「お前は娘に悪い影響を与えている」

 (2019年撮影の動画より)「お母さん大好き、このくらい大好き」

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 撮影する母親に無邪気な笑みを見せる女の子。この直後、母と子は引き裂かれてしまった。

 東京都内に住む40代の斎藤さん(仮名)。閑静な住宅街の一軒家で、夫、小学4年の長男、幼稚園年中の長女と暮らしていた。専業主婦だったという。

 (斎藤さん)「ここは家から一番近い公園で、子どもが0歳のときから毎日のように来ていた。娘はブランコが好きでずっと乗っていたかな。息子はボールを持ってサッカーをしたりとか」

 斉藤さんによると、子どもの行事には夫婦そろって参加するなど、仲の良い家族だったという。しかし2019年夏、斉藤さんが家族の都合で帰省していた際、それは突然起こった。

 (斎藤さん)「(夫から)娘が義理の母の悪口を言ったというふうに言われて、それは私が娘に吹き込んでいるんだと。だからお前は娘に悪い影響を与えているから会わせられないって言われたんですよ。そこから断絶が始まりました。自宅の鍵も取り上げられて」

 一方的に家から閉め出されたというのだ。夫とは連絡がつかなくなり、このときから子どもたちに会うことができなくなった。

 (斎藤さん)「引き離される年の2019年の写真です。実は写真を1枚ももらえていないので、私が最後に持っている子どもの写真というのがもう4年以上前のものなんですね」

元夫は裁判で“斎藤さんが子どもを虐待”と主張

 子どもと再び普通に暮らしたい。そんな願いを抱いていたが、断絶から1年半が経ったころ、それが断たれてしまう出来事が起こる。

 (斎藤さん)「ネットを調べたら自分の家が売りに出されていたのを見つけて、逃げられたと思いました。すごくショックでしたね」

 斉藤さんに一切の相談なく家が売却されたのだ。夫の所在もわからなくなり、子どもたちとの接点が完全に断たれた。そして去年春に離婚が成立。元夫側は裁判で、斎藤さんが子どもを虐待している、と主張。それを真っ向から否定した斎藤さんの主張は認められず、親権者は子どもと生活をともにする元夫側となった。私たちの取材によると現在、元夫と2人の子どもは、別の女性とその連れ子らと生活をしている。

 (斎藤さん)「自分の子どもの居場所がわからないというのは本当に想像もつかない苦しみです。こんなことがまかり通るのは本当に理解できないし絶対におかしいです」

 斎藤さんが断絶後に子どもたちと会えたのは裁判所の中だけ。この時、小学3年生になった長女が斎藤さんに渡した手紙が残っている。

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 (長女からの手紙より)「元気ですか?3~4年あってないから心ぱいです。いっぱい友だちのいる3年生になったよ。またいつかあいたいです」

 (斎藤さん)「『母と子の関係で会いたかった』と書いてあったり、折り紙の工作で『大好き』っていうのを作って持ってきてくれていました。娘の文字を知らなくて、こういう形で初めて知るというのは、本当に想像もしなかったことです」

 裁判で子どもたちと月に一度の面会交流は認められたが、現時点で面会は実施されていない。

 子どもの連れ去りは斉藤さんに限ったことではない。NPO法人が今年1月にWEBで行ったアンケートによると、国内で少なくとも約500人が子どもの連れ去り被害を訴えているという。

離婚セミナーで“子の連れ去り”を指南する弁護士も

 では、なぜ子どもの連れ去りが起こるのか。実はこれを推奨する専門家がいたことがわかった。私たちは、公のセミナーの場で実際に連れ去りを指南する弁護士の音声記録を入手した。

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 (弁護士 ※音声記録より)「離婚後に親権者になりたい場合は、必ず別居するときにお子さんと一緒に家を出てください」

 これは去年9月、東京都世田谷区が主催した離婚セミナーで講師として登壇した弁護士が発言したもの。子の連れ去りを指南しているように受け取れる内容だ。

 (弁護士 ※音声記録より)「一番は裁判所としてはですね、現状維持、つまり離婚するとなったときに、誰と一緒にいてその生活が安定しているかどうかを大事にします。いろいろもめたりして時間がたつとしても、お子さんと一緒にいることによって、そこで監護養育しているという実績が積み重なっていきますので、最終的に親権をより取りやすくなります」

国会でも問題視 違法性について言及する議員も

 この発言は今年2月の国会でも問題視され、違法性についても問われた。

 【2月7日の衆議院予算委員会より】
 (日本維新の会 市村浩一郎衆議院議員)「子どもを連れて出ていけば親権を得られるからとにかく早く出てきなさいと。もしこれ実子誘拐とした場合は、それを指南した弁護士はほう助罪に当たるということも考えられなくはないと思いますが、いかがでしょうか?」
 (松村祥史国家公安委員長)「警察については届けがあればしっかりと法と証拠に基づいて捜査するということになります」

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 弁護士はどういう意図でこの発言をしたのか。取材を申し込んだところ「一切応じられない」との返答だった。

 一方でセミナーを主催した世田谷区は発言についてこうコメントした。

 (世田谷区の回答より)「講義の中で、一部不適切な行為を助長する発言がありご指摘をいただきました。講師には、講義内での発言について謝罪いただいています。いただいたご指摘は真摯に受け止め、再発防止に努めてまいります」

連れ去られた息子を探しにアメリカから来日した父親

 子どもの連れ去り問題は国内にとどまらない。今年1月、我が子を探しに来日した男性がいる。アメリカ・シアトルに住むジェフリー・モアハウスさんだ。

 (ジェフリー・モアハウスさん)「何度息子を見つけようとしてそれに失敗したかわからない。これが今できる最も良い方法だと思います」

 14年前に日本人の元妻に長男を連れ去られたジェフリーさん。今回、その息子が成人したことを受け、日本の警察に行方不明者届を提出したのだ。

 長男は6歳までジェフリーさんと元妻とアメリカで一緒に生活していた。ジェフリーさんと共に外に出かけ、体を動かすのが好きな活発な男の子だったという。2010年に撮影されたジェフリーさんと長男の写真を見せてもらった。

 (ジェフリー・モアハウスさん)「この写真は連れ去られる約2週間前に撮影されたものです。彼は私の肩の上に乗るのが好きでした」

「彼が今何に興味を持ちどんな疑問を持っているのか知りたい」

 ジェフリーさんは元妻と2008年に離婚。その裁判で、元妻はアルコール依存症などの兆候が認められ、いわゆる親権者はジェフリーさん単独となった。しかし…。

 (ジェフリー・モアハウスさん)「元妻は長男を日本に連れていくことが許可されていませんでした。しかし彼女はアメリカの裁判所での合意を破ったのです」

 裁判所の命令を破り、長男を日本へと連れ去ったのだ。それから14年、長男が今どこでどう過ごしているかさえ何もわかっていない。

 (ジェフリー・モアハウスさん)「私の長男の記憶は6歳半までで遮断されていて、その記憶は映画のように頭を駆け巡っています。私は彼が今何に興味を持ち、どんな疑問を持っているのか知りたい。もし警察が彼を見つけ、私と会うことに彼が興味を示してくれたら、私はすぐに次の日本行きの飛行機に飛び乗っているでしょう」

 後日、警察はジェフリーさんの長男を見つけ、長男に確認を取ったが、長男はジェフリーさんと会うことは望まなかった。

 国内だけにとどまらない子どもの連れ去り問題。理不尽な変化を強いられる子どもたちは何を思うのだろうか。

8か月前