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3/1(金) 8:33配信
現代ビジネス
妻の身勝手な「離婚要求」に夫が決断したこと
photo by gettyimages
今回の相談者、篠山大河さん(仮名・38歳)は妻と一人の子どもと別居していますが、それでも家事と育児を精力的に行ってきました。妻子の家に通い、料理、洗濯、掃除はもちろん、子どもを学童や習い事への送迎し、子どもが風邪を引いたときは看病もしました。
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しかし、こんな生活が3年つづいたとき、ついに妻から「離婚して欲しい」「家事や育児の協力は終わりにして欲しい」と非情な宣告を受けたのです。
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっています。
前編『家事と育児に献身的な夫が「近所の騒音トラブル」に悩まされ、別居の末に…妻の「非情な宣告」に崩れ落ちた「絶望の瞬間」』で紹介したとおり、現在、法制審議会が「共同親権」の要綱案を作成しています。
「共同親権」とはつまり、離婚しても夫婦が協力して子ども育てるということですが、そんなことは本当に可能なのでしょうか。
今回は親権を持つ妻と親権を失った夫が、まるで共同親権のような生活を送っている大河さんの事例を紹介します。私たちは、この元夫婦を通じて共同親権による子育てを疑似体験できるかもしれません。
なお、本人が特定されないように実例に反しない限り、内容に多少変更を加えたことをお断りします。また別居の経緯、離婚するまでの流れ、離婚後の生活スタイルなどは、各々のケースで異なりますので、あくまで一つのケースとして参考にしてください。。
離婚後、父親が遠ざけられるワケ
現在の法律では単独親権で、共同親権は認められていません。大河さんのケースでは、妻が子どもの親権を持ったら、大河さんはもう子どもと最小限しか関わることができません。
もちろん、離婚しても大河さんとその子どもは親子のままです。何があろうと縁が切れるわけではありません。そのため、妻が親権をもったとしても大河さんには子どもと会う権利が認められています(=面接交渉権)
その場合の大河さんと子どもはどのように面会するのでしょうか。
たとえば、前もって元夫と元妻が話し合い、面会の日時や待ち合わせの場所、送迎の方法、面会の方法(食事をする、買い物をする、映画を見るなど)、第三者の立会の有無(祖父母など)を決め、当日は事前の約束通りに面会を実施します。これが多くの人が想像する「離婚後の面会交流」です。
しかし、「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によると、母子世帯のうち、父と子が「現在も面会している」のは全体のわずか30%に過ぎません。父と母との間で面会の約束、つまりその頻度や時間、場所、送迎方法などを取り決めるケースは全体の3割にとどまっており、我が子の顔を見ることすら叶わない父が7割に達しているのが現実です。
しかも、面会の約束を取り決めない理由で最も多いのは、「相手と関わりたくない」(26%)というものです。大河さんは「家事や育児の協力は終わりにして欲しい」という妻の言うがままに離婚すれば、今後子どもに会うことすら困難になってしまう可能性がありました。
大河さんは「妻と離婚してもいいけれど、お互いの家を行き来することを続けたい」と願っていました。
父親が、子どものために最大限できること
親権が夫に渡ることは、ほとんどない Photo/gettyimages
この場合、大河さんが子どもの親権を持つのが理想ですが、単独親権のいまはそれはあまり現実的ではありません。統計上、子ども1人の場合、父親が親権を獲得した例はわずか13%しかありません。親権はほとんどの場合、母親が持つのが一般的で、父親は圧倒的に不利なのです。
ましてや大河さんは、隣人の騒音で不眠となったことが理由とはいえ、子どもを置いて家を出たという負い目があります。何より大河さんが親権を得ることは、子どもから母親を奪うということでもあります。
この罪悪感から、大河さんは親権については争わない決断をします。つまり、大河さんは親権を持たない状態で、育児を継続する方法を模索することにしたのです。
子どもは3年間、1週間のうち、2日間は大河さんが自宅へやってくるという生活を送ってきました。大河さんの作った料理を食べ、大河さんが学童や習い事の送り迎えをし、妻が帰宅するまでの間は大河さんと一緒に過ごすのが当たり前でした。
子どもはすでに9歳となっていました。両親が離婚したことを理解できる年齢です。ただでさえ、両親の離婚という事実にショックを受けるのに、離婚前の生活が離婚後と大きく変化したら、そのショックは計り知れません。
筆者は「離婚にともなって環境を変えるのは、子どもにとって望ましくありません」と念を押しました。
ただし、子ども自身が大河さんを嫌っているのなら話は別です。
例えば、大河さんと口を利かなかったり、部屋に閉じこもったりしているのなら、無理に大河さんは育児に関わらない方が良いでしょう。しかし、大河さんの目で見る限り、子どもの様子は別居の前と後でほとんど変わらなかったようです。
もちろん、父親が突然出て行ったのだから、大河さんへの不信感や嫌悪感が全くないというわけではないでしょう。なぜなら、同居時と別居時で生活スタイルは大きく変わったからです。
それでも、子ども自身が「もうご飯を作らなくていい。学童から一人で帰ってくるし、宿題はユーチューブで調べるから」などと大河さんを遠ざけない限り、子どもにとって大河さんは必要な存在と言えるでしょう。
面会交流に移行することは、子どもから大河さんを奪うことになりかねません。
妻が受け入れるしかなかった「条件」
離婚後も父親が、育児をつづけられる道は開かれるだろうか…?Photo/gettyimages
ましてや、大河さんと子どもが面会交流だけになることは、妻の負担も増やします。
面会交流となれば、大河さんは家事や育児の負担から解放されますが、妻は今まで大河さんが担ってきた負担を背負わなければならなくなります。
その結果、妻は子どもを迎えに行くため時短勤務に変更しなければならず、その分だけ給料が減り、支出を切り詰めなければならなくなるでしょう。仕事で疲れて帰宅し、晩御飯を作り、翌朝はまた出勤に間に合うように洗濯機に衣服を入れ、ベランダに干し、その合間に朝御飯を作ることになります。
妻は「もう会いたくない」という感情的な理由だけで、大河さんの家事と育児を手放すことは難しかったのです。
条件は次のように定められました。
大河さんは毎月、4万円の養育費を支払う。家事や育児にかかる食費や交通費などを養育費から差し引かないことを条件に、大河さんがお互いの家を行き来する。そのために、大河さんは妻の家の鍵を持ち続けることになりました。
大河さんの離婚と育児の形は、子どもにとってメリットの大きい参考事例と言えるでしょう。
とはいえ、大河さんのように夫が離婚後も育児に携われるケースはあくまで少数で、大多数は父親と母親のどちらかかが子どもと面会すらできなくなります。単独親権しか認めない現行法は、やはり問題がないとは言えません。
夫婦は離婚すれば赤の他人ですが、親子は離婚しても親子です。あくまで「子どものため」という視点に絞り、離婚に伴う影響を最小限にとどめるために「共同親権」の導入が検討されています。
この議論には「DVへの配慮が足りない」と批判の声もありますが、それを踏まえつつ離婚後の親子関係について最適な法整備が行われることを筆者は望んでいます。
さらに連載記事『「妻の裏切り」の決定的証拠がドライブレコーダーに記録されていた…! 「避難生活」で壊れゆく「夫婦の仲」と「夫の覚悟」』では、災害時に壊れてしまう夫婦の儚い関係を紹介します。ぜひ、参考になさってください。
露木 幸彦(行政書士)