https://news.yahoo.co.jp/articles/fdac3f9dfe1ddaf10fe6ea52227b89f7e68b5607
2/11(日) 9:00配信
西日本新聞
西日本新聞 社説
親の離婚後はどんな親子関係が望ましいか。子どもの幸せを最優先にする仕組みにしなければならない。
法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、離婚後の親権を見直す要綱案を取りまとめた。父母のどちらかに親権を認める単独親権に加え、両者が親権を持つ共同親権が可能になる。
父母が話し合って単独か共同かを選び、合意できなければ家庭裁判所が判断する。法務省は今国会に民法などの改正案を提出する方針だ。
共同親権が導入されると、離婚後の家族に与える影響は大きい。専門家で構成する部会では賛否が分かれた。
3年近くにわたり37回の会議を重ねても議論は平行線をたどり、最後は異例の多数決に持ち込まれた。通常は全会一致である。
それほど懸念は根強い。国会は採決を急がず、熟議に努めてもらいたい。
要綱案は、親権を「その子の利益のために行使しなければならない」と明記した。親権は親の権利を振りかざすものではなく、責務と定めたことは評価できる。
親権は子どもの日常の世話や居住地の決定、財産管理などあらゆることに及ぶ。そもそも親は親権に関係なく子を養育する責任があり、離婚後も協力して子育てをする共同親権の考えはうなずける。
子どもを一方的に連れ去られて苦しむ親もいる。欧米では共同親権が主流で、日本も多様な家族に対応できるようになるとの期待もある。
一方で、離婚後もドメスティックバイオレンス(DV)や子どもへの虐待が継続しないかと不安を抱く人がいる。
要綱案はDVや虐待があれば単独親権とするものの、心理的な被害は証明が難しい。加害親の圧力によって、被害親が共同親権に合意させられる恐れもある。不適切な共同親権が見過ごされれば、被害親や子どもへの負担は計り知れない。
父母のどちらかが反対しても、共同親権となる場合もあり得る。破綻した夫婦関係で協力するのは簡単ではなく、子どもの生活に必要な手続きが阻まれかねない。家裁やNPOなど第三者の継続的な支援が欠かせない。
共同親権の場合でも「急迫の事情」があれば、単独で親権が行使できる。部会では入学手続きや緊急の診療などの事例が示されたが「急迫」の全体像は不明瞭だ。
家裁の業務は膨らむ。調査官を増やして研修を充実させるなど、必要な体制を整えなくてはならない。
離婚に当たり、両親が親権を学ぶ機会もつくるべきだ。こうした準備が整わないまま見切り発車すれば、最も弱い立場の子どもが犠牲になりかねない。
親の離婚を経験する未成年の子どもは年16万人に上り、親権の在り方は身近な問題である。「子の利益」を中心に据えて議論を深めたい。
西日本新聞
記事に関する報告