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2024年2月2日 5時00分
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法制審議会の部会に臨む委員ら=2024年1月30日、東京都千代田区、久保田一道撮影
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父母の離婚を経験する子どもにとって最善な制度へと、練り上げてほしい。
法制審議会の部会が民法改正要綱案をまとめた。父母のいずれかが親権者になる現行の単独親権に加え、双方による共同親権も選べるようにする内容で、離婚後の家族のかたちへの影響は小さくない。
「親権」は親の権利とだけ受けとられがちだが、未成年の子どもの日常的な世話、教育、財産管理、契約の代理など、親の社会的責務としての性格が強い。また、離婚で親権者でなくなっても法的な親であることには変わりなく、養育費などの義務はある。
21年に約18万4千件の離婚があり、未成年の約18万3千人が影響を受けた。戦後の民法改正以降、日本では結婚中は父母の共同親権、離婚後は一方の単独親権とされてきたが、欧米では父母双方の養育を受ける子どもの権利をふまえ、1990年代以降、共同親権が広がってきた。
要綱案では、離婚する父母は双方または一方を親権者とし、合意できない場合は家裁が決めることとする。
離婚後も父母がそれぞれ責任をもって子とかかわる選択肢として、共同親権はあってよい。ただ、夫婦として破綻(はたん)した2人が、協力して親権を担うのは生半可なことではないと考えるべきだ。住む場所や進路、医療など親権者がすべき大事な意思決定が、父母の意見対立で進まず、子の利益に反するおそれすらある。
家族の事情は多様だ。共同親権、単独親権のどちらを原則・例外とすることなく、それぞれに最適な形になることが求められる。
特に心配なのは、DVや虐待の加害親が共同親権者になり、子ともう一方の親にかかわり続ける事態だ。要綱案は「子への害悪のおそれ」「DVで共同親権が困難」など、単独親権にしなければならない状況を具体的に例示し、決まった親権者も問題行動があれば変更できるとした。
家裁は従来、養育能力、子への愛情、生活環境などを基準に親権者の決定に関わってきた。共同親権が選択肢になれば、父母が協調関係を続けられるかも考える要素に加わる。たやすい判断ではない。
関連法案は今国会に提出される見通しだが、家裁の態勢や専門性をどう充実させていくかも合わせて、議論を詰めなければならない。
要綱案は今回、親権の性質について「その子の利益のために行使する」と初めて明記した。両親が離婚した後も、子どもが安心して成長できる解決策を探る制度にしていきたい。