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毎日新聞2024/1/30 16:09(最終更新 1/30 16:27)1007文字
離婚後の家族法制の見直しを議論している法制審議会の部会=東京・霞が関の法務省で2024年1月30日午後1時40分、飯田憲撮影
家族法制の見直しを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は30日、婚姻中の父母に認められている共同親権を離婚後も可能とする民法改正の要綱案を取りまとめた。離婚後の共同親権が導入されれば1898年の明治民法施行以降初めてで、離婚後の法制度は大きく見直されることになる。2月に予定されている法制審の総会を経て法相に答申され、政府は今通常国会に改正案を提出する方針。
厚生労働省によると、婚姻件数は近年、年間50万件前後で推移する一方、2022年は17万9099組が離婚し、うち9万4565組に子どもがいた。およそ3組に1組が離婚を選択する社会情勢となる中、部会は、これからの家族法制がどうあるべきか、議論を重ねてきた。 Advertisement
要綱案はまず、これまでは法解釈に委ねられていた、子の養育をする上で父母が負う責務を明確化。親権の有無に関係なく、父母には子の人格を尊重して子を養育し、子の利益のために協力する義務があることを明記した。
その上で、離婚後共同親権の道を開き、父母は協議して離婚する際に、離婚後の共同親権か単独親権かを選ぶことができるとした。協議が整わなければ家裁が審判で親権者を決める。家庭内暴力(DV)や児童虐待があり、共同親権がふさわしくないケースを除外するため、家裁が判断の手掛かりとする考慮要素も盛り込んだ。
親権行使のルールも再整備した。婚姻中でも離婚後でも、共同親権の下では父母が共同して親権を行使するのが原則としつつ、子の日常に関する決定については父母が単独で判断できるとの規定を加えた。また、「急迫の事情」があれば、父母のいずれかが単独で親権を行使できるとした。
養育費の着実な支払いや、別居親と子の早期の交流を促す規定も新たに設けた。父母双方が協力して得た財産を分ける財産分与についても請求できる期間を現行の2年から5年に延長する。
部会は21年3月に初会合を開き、2年10カ月にわたって計37回の会合を重ねてきた。【飯田憲】
親権
未成年の子に対して親が持つ権利と義務。主に、子の身の回りの世話(監護)や教育、子の居所指定をする「身上監護」と、子の財産を管理する「財産管理」からなる。民法は818条で「父母の婚姻中は、父母が共同して行う」として婚姻中の共同親権を定める。一方、819条で「父母が離婚をするときは、一方を親権者と定めなければならない」として離婚後の単独親権を規定している。