離婚後「養育費が支払われない」率71.9%。不払いが引き起こすシンママの貧困化を改善する方法とは

https://news.yahoo.co.jp/articles/7181f147c5fc77536e093c6349618aecf1352fe4?page=1

1/7(日) 21:10配信
OTONA SALONE

共同親権問題について語られる場もじゅうぶんとは言えない。

「子の連れ去り違憲国家賠償訴訟」の共同代理人を務める神奈川法律事務所所属の弁護士・大村珠代先生に、この問題について5話連続で詳しくお話を伺うシリーズです。

普段DV・モラハラを受ける女性の声を聞く機会が多い編集部は、引き続き「DVから逃げきれなさそうな」共同親権には懐疑的な立場でお話を伺っています。

*タイトルは令和3年度全国ひとり親世帯等調査による
共同親権は「話し合い」が基本。シンママの貧困化を改善する可能性がある

繰り返しになりますが、共同親権問題は一見するとDVから逃げるための子の連れ去りに結びついているように思われがちですが、そうではなく、離婚のあとのシンママの困窮防止のほうに結びついています、と大村先生。

「共同親権のほうが女性にもメリットが大きいのです。現状は交通事故にあった、学費が足りないなどのピンチも片親で乗り切らざるを得ないケースが多々ありますが、実は離婚しても親としての責任が免除されるわけではありません。なのにこれまで、単独親権という制度や、親権という用語から、親の権利のほうが重視されてきました。子どもを養育保護する親の責任としてはとらえられてこなかったのです。結果的に、親権がないことで、親の責任もなくなると誤解されてきたように思います」

まさに、私も、親権の放棄とは「親でいる権利と義務を放棄する」のだと考えていました。

「子どもと全く会えない、または会える頻度が少ないと親子が疎遠になり、悲しいことですが、親は子どもを忘れていきます。子どもに養育責任を負っていることも忘れてしまうのです。これは、子どもへの責任を放棄させることだと思いませんか」

なるほど、単独親権だと負うべき義務に目隠しをしてしまうとも言えそうですね。共同親権として養育の場面でも子どもとの交流を持ち、楽しい時間を過ごすことで、より責任を果たしてもらうという考えですね。

「そもそも、父権が子どもや妻に対する支配権だった状態のままであることが異常なのです。離別した子どもがわざわざ貧困へ突き進んでしまう現状は明らかに間違っています。このまま制度が変わらないと、私たちの子どもの世代もシングルを選択すればワンオペで貧困に陥る未来のまま。そんな状態は間違っています。子の連れ去り問題、共同親権問題の根底に潜むハードルが正しく理解され、改善されることを願ってやみません」

では、この問題について私たちはどう考え、どのような支援をしていけばいいのでしょう?

大村先生のもとを訪れた際には懐疑的だった筆者ですが、なるほど、共同親権であるべきなのかもしれないと考え始めました。でも、自分の感じたことを社会と共有するために、何をしていいのかがわかりません。

「まず、単独親権制度のもとで離婚によって親子が断絶する問題に関心を持っていただきたいのです。共同親権、共同監護のほうが、子どもにとっても、父と母それぞれにとっても望ましいという共通認識が形成されれば、法律も変わります」

なるほど、まずは関心を寄せるのが大事ということですね。ここで感じた疑問や感想を何かに生かすことは?

「子育て経験がある人ならば、全く何の問題もなく育児を終えるということはありえず、常にアクシデントが起きるもの、それらをどう乗り越えたのかの経験をお持ちです。ですから、その経験を糧に、育児と離婚の間で悩む人の気持ちを傾聴する側に回ることができるでしょう。離婚経験を持つ女性同士ならばその体験を語り合う場もつくれると思います」

子どもの側に対してはどうでしょう。たとえば子ども食堂のように、子どもが逃げ込める場所があったらいいのでしょうか? それなら私たちもイメージしやすい。ひとり親カフェみたいなムーブメントがあるといいということですよね。

「そのとおり、子どものケアも必要です。離婚によって苦しい思いをしている子がその気持ちを吐き出す場が全くありません。友達にも誰にも言えない。それを聞いてくれる大人のNPOが少しずつ活動を始めていますから、検索して参加してみるのもいいでしょう。SNSなどを利用してコストをかけず運営することもできますので、有志が集まって団体を作ることもできます」

あそこに行ったらほっとする、誰も自分を責めずにただ話を聞いてくれるという場所が増えていくといい、と大村先生。

「私たちはあなたを助けますよという意思を明確に表示してあげてほしいのです。離婚を経験した人が話を聞いて、気持ちを受け止め、自分の経験から相談に乗れる場がこれからできていくことを期待しています。苦しみは話して外に吐き出すこと自体が大事ですし、また親にせよ子にせよ離婚による離別のつらさを乗り越えた経験を分かち合う場が社会に少ないのが現状です。これらがすべてクリアされて、はじめて日本は安心して結婚できる、出生率が上向く社会になるのだと思います」

お話/弁護士 大村珠代先生

神奈川県・JR川崎駅から徒歩7分、神奈川法律事務所に所属。家族法が専門。子の連れ去り違憲訴訟、自由面会交流権訴訟の共同代理人。日ごろの暮らしに密接な離婚、相続、成年後見などが重点分野です。連れ去りや離婚に悩む方、女性弁護士になら話せる悩みがある方、この機会にぜひ相談してみてください。「依頼者・相談者が自分らしい生き方ができるよう伴走します。ひとつひとつの事件に真摯に、親身に向き合うことを心がけています」。日弁連高齢者・障害者権利支援センター、神奈川県弁護士会高齢者・障害者の権利に関する委員会所属。

オトナサローネ編集部 井一美穂

11か月前