子持ち夫婦の離婚…「親権争いは母親が有利」は本当なのか?【弁護士が解説】

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11/16(木) 20:36配信

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)

未成年の子どもがいる環境下での離婚は、親権をめぐってシビアな争いとなることが多くあります。本記事では、家事裁判を得意としている水谷江利氏が、「親権」や「監護権」、「共同親権」について解説していきます。

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「監護権」と「親権」の違いは一体何なのか

「親権」とは、未成年の子供を保護・養育し、子どもに財産があれば代わって管理する親の権利・義務のこと。日本では、夫婦のどちらか一方を「親権」者と定めなければ離婚できないことになっています。以下の2つの役割から成立します。   (1)身上監護権:子どもの身の回りの世話をしたり、しつけや教育をする権利・義務。 (2)財産管理権:子どもが自分名義の財産を持っている時、法律行為をする必要があるときに代理して管理したり契約を締結する権利・義務。 子どもの進学先を最終的に判断する、アルバイトの可否を判断する、これは(1)。子どもが携帯電話を契約する際に保護者の印鑑を求められますが、これは(2)の話になります。 本来、「親権」のなかに、子どもを監護する(1)の権利が入っています。事案によっては「親権」と「監護権」を分けて考えることがありますが、親権と監護権とは一致させておくことが原則です。 なお、離婚の際に定めなければならないのは「親権者」で、離婚届にも記載するのは親権者のみ。監護者と別に分けたい場合には、調停や公正証書で別々に定めることが必要です。

「親権争いは母親が有利になる」は本当なのか

親権者をどちらにするかは、まずは話し合いで決めます。それでも決まらなかった場合、この場合は「子どもの利益・福祉」を基準に、裁判所で決定されることになります。このとき、親の意欲や能力、心身状態、愛情、生活態度や住環境、監護補助者の有無などから総合的に判断されるものとされます。 以前は「母親が有利」だと思われがちで、母親が親権者となることが多かったのですが、時代の流れとともに「母性優先」だけでは説明がつかなくなってきました。 一方で、乳幼児の場合は、面倒を見ることが必要なので「母親優先」が妥当します。 「経済力があるから父になるはず」、「経済力がないから母では認められない」こういったご相談も多いですが、「身体的に疾患があって親権を維持することができない」というような場合でない限り、この点はあまり問題ではありません。 むしろ、重視されるのは現在の「子どもの環境が著しく変わらないようにする」という「現状維持の原則」です。 普段の子どもの「主たる監護」をどちらがしているか、が大きな基準となります。日中は母が面倒をみているケースが多いので、10歳ぐらいまでは母が指定される傾向が強いのは、このためです。

離婚後、親権者が死亡した場合、子どもはどうなる?

離婚する場合、両親のどちらが一方が親権者となりますが、その親権者が死亡した場合、子どもはどうなるのでしょうか? 親権者が死亡した場合、親権者がいなくなったものとして、「未成年後見人」が選任されることとなります(民法838条)。もう一方の親の親権が当然に復活するわけではありません。 もう一方の親が親権を復活させることを希望する場合には、もう一方の親が「親権者の変更」(民法819条6号)の申立を行い、裁判所が親権者を変更するのが適切と認めた場合には、新たに親権者となります。「これを防ぎたい」という場合には、親権者はあらかじめ遺言を作成する必要があります。 民法839条1項は「未成年者に対して最後の親権を行うものは、遺言で『未成年後見人』を指定することができる」としています。ですから、親権者である自分が亡くなった後、他方の親権を希望しないとき、あるいはほかに子ども(あるいはその財産)を託したいと思う人がいるときは、遺言を書いておく必要があります。

社会的にも関心の高い「共同親権」への期待は

アメリカなどでは離婚後も両親双方に親権が残る「共同親権」の制度があることから、日本でもこの発想を取り入れようという動きがあります。 とはいえ、現状の家事事件の実務では、まだまだ、一方が子どもを引き取り親権者となることが原則。他方の子どもとの関係は「面会交流」によって担保するものとしています。 このような制度の是非はさておき、まずは、現状の日本の法制度下で離婚後の子どもとの関係を考えざるを得ませんから、枠組みを理解し、きちんと考えて臨んでいただきたいと思います。   水谷江利 世田谷用賀法律事務所弁護士

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