2023/11/8 06:00
https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202311/0017005289.shtml
率直に言って何言ってるかわかんないシリーズ。
離婚しても、子育てに父と母が関わることが望ましい。ただしそれは、父母が対等の立場で協力し合える関係を築いてこそだろう。
法制審議会の家族法制部会は、民法を見直し、離婚後に父母の双方が親権を持つ「共同親権」を導入するたたき台の修正案を示した。
昨年秋にまとめた中間試案では、現行の「単独親権」のみを維持する案など複数の選択肢を併記していた。このたび、初めて見直しの方向性を集約し、「父母の双方または一方を親権者と定める」とした。
共同親権を巡っては、国民の間で賛否が分かれ、専門家の意見も割れている。子どもの将来を左右しかねないだけに、懸念を残したままの拙速な導入は容認できない。
親権を持つ父母の意見が対立すれば、苦しむのは子どもだ。何より子どもの利益を優先し、慎重に議論を積み重ねる必要がある。
親権は子どもの世話や教育をする「監護権」と、「財産管理権」に大別される。共同親権では子どもの進路や転居、親が再婚して新しい家庭で養子縁組をするなどの際、もう一方の親の同意が必要となる。
日本では離婚した夫婦に未成年の子どもがいる場合、8割超は母親が親権者となっている。近年、親権を持たない親から「子の養育にもっと関わりたい」との声が高まったことなどから、法制審議会が親権の在り方を検討してきた。
たたき台は、父母が離婚時に親権で合意できなければ、家庭裁判所が父母と子の関係などを考慮して親権者を決める、とした。修正案はこの枠組みを維持した上で、共同親権が「子の利益を害する」場合、家裁は父母どちらかの単独親権に定めなければならない、と付け加えた。
「ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の加害側が親権を持つ危険がぬぐえない」などの批判を受けた修正だろう。共同親権を採る国では、子どもの安全確保のために監護や面会交流を見直す動きがある。日本は他の先進国と比べてDVの被害者保護が不十分なだけに、そうした懸念への配慮は当然だ。
家裁が両親や親子間の関係の実態を見極めるための体制構築が極めて重要になる。
親権は、親が持つ絶対的な権利のように誤解されがちだが、正しくは未成年の子どもを守り、育むために親が果たすべき責任のことである。共同親権が主流の欧米は「親責任」などと表現している。この認識を社会全体で共有したい。
親権をどちらが持つか、共有するかにとどまらず、ひとり親家庭を経済的、精神的に支える仕組みの構築に向けた議論も深めるべきだ。