あふれる傍聴席
これまで共同親権を世に訴える配信活動を行ってきた羽田ゆきまささんの初公判(2022年8月9日(水)14:30~ 東京地裁828号)が開かれるということで傍聴に行ってきた。
開廷の1時間前、13:30過ぎに現地に到着。今日の目当ての裁判が、8階一番奥の、傍聴席20席という、ごく小さい法廷で開かれることを確認した。
開廷15分ほど前には、書記官によって傍聴人が締め切られ、その後も傍聴希望者が続々と訪れては、書記官に断られて帰っていく姿があった。傍聴20人のほか、傍聴が叶わなかった方は、20~30人いただろうか。
定刻通り、法廷には裁判官、検事、羽田さんの代理人・下村大気弁護士、書記官が着席し、少し間をおいて、羽田ゆきまささんが職員2人に付き添われて入場した。
初めて間近でみた、ひとが手錠と腰縄をつけたその姿から、なんとも表現ができない苦しい気持ちになったのは、これまで、彼がどんな思いで政治系ユーチューバーをやってきたかを少しは知っていたからだと思う。
羽田さんの様子
法廷に登場した羽田さんは、普段、配信で活動していたときに着ていたようなベージュ系のチェックのシャツと、チノパンだったし、顔色も表情も、ほんの数か月前に会ったときとなにも変わらないような気がして、小菅の東京拘置所での生活はきついものだろうけど、この事態は彼にとっては想定内の範囲で、精神的にやられているわけではないのかな、とも思った。
身体の前で拘束された手錠と腰ひもがすぐさま外され、発言台に立つことを促されると、羽田さんは、履いていたズボンを一度両手で大きく上に引っ張り上げた。いつもなら着けていたベルトが、こういった事態下においては、事故防止のために取り上げられてしまって、ズボンがウエストから少しずり下がったのが気持ち悪かったのだろう。
タカシマという中年の裁判官によって、羽田さんの本籍地、名前、職業といった、本人確認がされた。
羽田さんが答えた職業は、大田区議選に出馬しており、立川市長選挙立候補もしており、会社役員だということだった。
裁判官により、この裁判は、公開でありながら、名誉棄損の案件であるため、妻と2人の子供に関しては、「妻」「長女」「次女」など、法廷では名前を口にしないよう注意があった。
罪状認否「名誉毀損にはあたらない」
そして、いよいよ起訴状の朗読に入った。検察官が紙に書かれた起訴状をぼそぼそと読み上げる様は、肥満体の彼をよりいっそうふてぶてしく感じさせるに十分なものであった。
起訴内容は、羽田さんが、妻の顔に黒塗りの目隠しと、加工なしの娘2人の顔写真をのせたポスターを98か所に貼った、そのうちの1つは、学校の校門前に設置された選挙ポスター掲示板に貼られたことについて、妻が名誉棄損で訴えた、というものであった。
そして、羽田さんに裁判官から「起訴内容を認めるか?」という質問がされた。いわゆる、罪状の認否確認というものである。
羽田さんはポスターを貼った行為自体は認めるけれども、名誉棄損には当たらない。公共の利益を図る正当な業務行為である、ということを強調した。
そして「名誉棄損」をしようとしたのではなく、「日本の社会を変えたい」という思いで、行ったことの説明を始めた。
男性も被害者「日本の社会を変えたい」
日本を共同親権にすること、EU議会でも圧倒的多数によって非難されている状況を世間に広める意図であった。もとより、日本では、DVというと女性の被害者ばかりを取り上げ、男性がDV被害者の場合の扱いはひどい状況である。妻と、自分が警察署で、同時に、別室で事情を聴かれたことがあったが、「妻からDVを受けた」と自分が言っているにもかかわらず、羽田さんの(身体的)被害状況を全く調べることもなく、羽田さんが警察で話をしている間に、DV加害をした妻は警察署を帰されていた。これは、自分が男性だったから起きたことである。もし、女性がDV被害者だった場合、被害状況を調べることもなく、加害者を先に帰すなど起こらなかったはずである。こんな日本の状況を変えたいという思いで、ポスターを貼ったし、立候補が当選目的ではない、ということは、ポスターにも明記したわけで、名誉棄損には全く当たらない。と述べた。
続けて、裁判官が羽田さんの代理人・下村弁護士にも、「行為を認めるか?」という質問をし、下村弁護士は「貼った行為に争いはない。けれども、正当な業務行為であり、名誉棄損ではない。」という説明をした。
検察の主張
その後、検察官によって、結婚の時期、子どもがコップの水をこぼしたことに、妻がものすごく激怒したことをきっかけに、夫婦が揉めて、妻が実家に帰ったこと、その後、羽田さんが娘たちに会いたいと、再三、妻や義理父にも申し入れたり、抗議したりするも、全く受け入れられないまま3年以上が経過した。そのような状況なので、妻が子どもに会わせないならば、選挙のポスターに妻が連れ去り加害者であること、子供は連れ去り被害者であることを書いて貼る、という内容で何度も連絡をしたけれども、返事はないので、今回、98枚のポスターは、妻と子どもの居場所を重点に掲示されるに至ったことが主張された。
裁判官はそれをすべて聞き終わったところで、今後の裁判の進行について、妻も尋問するか?またその場合は遮へいが必要か?なども含めて、裁判官、検察官、羽田さん、下村弁護士で相談する必要があるということで、次回は8月22日㈫10:00から関係者のみの相談日が設定され、閉廷となった。
勾留は不当
羽田さんの逮捕が5月22日㈪、初公判が8月9日㈬ということで、実に2か月以上の勾留となっており、我々支援者仲間からは、期間があまりにも長いのではないか、という声が上がっているが、東京拘置所の中から、立川市長選に立候補したため、検察からすると、また立川で同じく、連れ去り・親子断絶を告発する内容のポスターを貼るに違いないと思われて、勾留が伸ばされている可能性がある。
羽田さんがどんな想いで、このポスターを作成したかと考えれば考えるほど、今回の戦法は、いささか過激過ぎたことが否めないものの、子どもを配偶者に連れ去られ、親子の関係を断絶させられ、DV被害者なのに全く取り合われないなど、法律や、家裁で八方塞がりになり、窮地に立たされている別居親の気持ちを代弁してくれているようにも感じた。ひきつづき、今後の刑事裁判の行方を見守っていこうと思う。
(2023.8.11共同親権運動を進める会会員N.O.)