離婚後の親権 父母共に責任負う制度を

https://www.sankei.com/article/20230529-UPHU4XEHDZLJHAR7KGBG3S3KYM/

2023/5/29 05:00

夫婦が離婚した後の子供の養育のあり方について、法制審議会の部会が検討を進めている。最大の懸案は親権だ。離婚後も父母双方に親権を認める「共同親権」を導入するかどうかである。

昨年示された中間試案では、共同親権を導入する案や、父母のどちらか一方にしか認めない現行の「単独親権」を維持する案などが併記されるにとどまった。

それが先月の部会では一歩踏み込んで、共同親権を導入する方向性が大筋で確認された。

妥当な判断である。夫婦が離婚しても親子関係がなくなるわけではない。建設的な話し合いで離婚後の共同親権を望む夫婦もいるだろう。速やかに細部を詰めて導入に向けた成案を示してほしい。

共同親権については、ひとり親世帯やドメスティックバイオレンス(DV)の被害者の支援団体から、安全が脅かされるとして反対する声がある。

もちろん、被害を受けた母子などが危険にさらされることはあってはならない。こうした不安に配慮すべきは当然だ。共同親権が導入されても、どういう場合には単独親権とするのか、きめ細かく検討することが必要である。

共同親権にした場合に、子供がどこに住むかを決める「居所の指定」も検討課題だ。進学先や住まいの決定などで意見が一致しないことはあるだろう。緊急時には一方が単独で居所を決めることなどが提案されており、より柔軟で使いやすい仕組みを検討したい。

離婚後の養育では親権以外にも課題がある。とりわけ養育費をどう負担するかは重要だ。単独親権でも共同親権でも双方が扶養の責務を負うのは当然である。

ところが、厚生労働省の調査によると、離婚後の養育費に関する取り決めがある母子世帯は半数に届かない。「相手と関わりたくない」「相手に支払う意思がないと思った」などが理由である。

双方が収入の情報開示を行うよう専門家や第三者が介在することも含めて、養育費の確実な受け渡しを担保する仕組みが必要だ。

子供の生活と安寧が何よりも重要である。子供が望めば、父親とも母親とも定期的に会える関係が望ましい。父母の多様な価値観に触れ、双方の愛情を確認しながら育つことは、子供の人生にも寄与するはずだ。その視点で検討が進展することに期待したい。

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