https://www.mbc.co.jp/news/article/2023051700064663.html
日本では2020年の統計で、「3組に1組が離婚している」とされます。子どもがいる夫婦の場合、離婚後に重要になってくるのは、「子どもを誰が育てていくか」ということです。
いまの民法では、父親か母親のどちらかとする「単独親権」とされています。これを見直し、今後、子どもの親権を両方が持つ「共同親権」導入が検討されています。
単独親権との違いや導入への課題などについて、当事者の声を取材しました。
(桜の会 平山雄一郎代表)「お父さんとお母さんが離婚したとき、子どもたちはどちらか一方の親と生活して、もう一方の親と会えなくなっているという事実を、皆さんに知ってほしい」
鹿児島市で街頭活動を行ったのは、大阪に本部を置く市民団体「桜の会」と、「鹿児島子どもの権利を守る会」です。メンバーのほとんどは離婚または離婚調停中で、子どもに会えない生活を送っています。
親権とは、「子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権利・義務」のことです。今の民法では、離婚後の子どもの親権は、母親か父親かどちらか一方にする「単独親権」と定められていて、親権者が子どもと暮らすケースがほとんどです。
団体では、「単独親権では親権争いから起きる子どもの連れ去りを避けられない」として、共同親権への法改正を求めています。
(桜の会 平山雄一郎代表)「私は法律を変えたい、社会を変えたい、間違った認識を変えたい」
翌日、メンバーは姶良市で勉強会を開きました。
単独親権では、・子どもとの関わりが少なくなり、養育費がきちんと支払われない・養育費を払っていても、子どもとの面会や交流が少ない、などの課題があると言われています。
国の調査では、母子家庭が離婚した父親から養育費を受け取っているのは24%にとどまっています。また、母子家庭で離婚した父親と子どもが面会・交流できているのはおよそ30%、父子家庭で母親と面会・交流できているのは46%です。
養育費や面会をめぐっては、「相手と関わりたくない」など様々な理由があるといいますが、会では、子どものために共同親権の導入が解決への道筋になると期待しています。
(鹿児島子どもの権利を守る会 黒木一也代表)「先進国では日本だけが単独親権」「日本のように養育費の支払い率20%、面会交流実施率30%という低レベルの問題を他国は改善できている」
こうした現状をうけ、先月、法務省の専門家会議は、共同親権の導入を前提に民法改正の議論を始めました。離婚する際に、夫婦が話し合って単独か共同かを選べる仕組みを軸に検討が始まっています。
(NPOキミト 森めぐみ代表)「私はこのニュースを聞いて(共同親権)導入に向けて動いたことが、本当に良かったと思っている」
親権問題に悩む人たちの支援を行っているNPOの森めぐみ代表です。共同親権の導入を歓迎する一方で、離婚の原因がDVや子どもへの虐待だった場合、被害が続くおそれを指摘します。
(NPOキミト 森めぐみ代表)「離婚でやっと逃げてきたにも関わらず、夫と一緒に何かしないといけないというイメージを持ってしまったら、彼女たち(DV被害者)は怖いと思う。国はDV被害者の心情に丁寧に配慮して、共同親権導入を進めていかないといけない」
勉強会に参加していた60代の男性と10代の息子です。
男性の妻は10年前、何の相談もなく息子を連れて自宅を出ました。そして「夫からDVを受けている」と役場に申請したといいます。男性の妻が役場で申請したのはDV等支援措置。受理されると居場所を秘匿できるため、DV被害者を守るための大切な制度です。
一方で、親権争いで有利になるよう、連れ去り同然で子どもと暮らし監護実績を作って、片方の親に会わせないように虚偽のDVを訴えるケースも少なくないと言います。背景には、単独親権のみが認めらている現状があるとみられます。
役場などの調査で「夫のDVはなかった」と認められ、男性は離婚調停を行いながら息子と一緒に暮らしています。
中学生の息子は、母に連れられ、父の元に戻るまでの度重なる引っ越しで新しい環境になじめず、不登校を経験。「共同親権の導入には賛成」で、「子どもが意見できる社会」を望んでいます。
(息子 10代)「自分の意志で、(父母)どちらに行きたいかを判断できたほうがいい」「同じ境遇の子どもがいると思うと、頑張ってほしい」
離婚問題に詳しい弁護士も「子どもの意思が尊重されるべき」と話します。
(鹿児島あおぞら法律事務所 犬童正樹弁護士)「一緒に暮らしていない親と会いたいという子どももいれば、部活や遊びたいので月に何回も面会交流したくないなど、いろんな子どもがいる。共同親権について、子どもの意見をないがしろにして勝手に親同士で進めるのはよくない」
導入に向けて議論が進む共同親権。DVなどの被害者や「子どもにとって最善の利益は何か」など、当事者に思いをはせた議論が求められます。