「逃げ出したかった」父の再婚で継母と過ごした日々 お母さんとは呼べなくて #令和の子

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5/17(水) 11:01配信

読売新聞オンライン

 毎年、新たに18万人の子どもが親の離婚を経験している。子どもたちはその時、どう感じ、何を思っているのだろうか。

「さん」付けで呼んだ

 「逃げ出したかった」。東京都の女性(34)は、父親の再婚で、中学1年から新たな母親と過ごした日々を振り返る。

 初めは優しかったその人は、学校での出来事を詳しく報告することや、優秀な成績を強く求めるようになった。期待通りにできていないとして毎日、激しく怒った。父親は仕事で忙しく、相談しても「母さんも頑張っているんだから」とたしなめられた。

 「お母さん」とは言えず、名前を「さん」付けで呼んだ。6歳で死別した実母が生きていれば、違った人生だったかもしれない。急に涙が出たり、眠れなくなったりした。

 女性は大学を卒業後、就職して結婚。次第に継母からの干渉は薄れた。「あの頃、同じような境遇の子に悩みを話すことができれば、少しは救われたのでは」と語る。そして、「もしかしたら、あの人も急に親になり、『あるべき母』像にとらわれていたのかもしれない」。自身も子を持つ母親となり、そう考える。  ◎

「ステップファミリー」

 厚生労働省によると、2021年に結婚した約50万組のうち、「夫妻とも、またはどちらかが再婚」だったのは26%で、50年前の10%から倍増した。「ステップファミリー」と呼ばれる、子どもを連れての再婚家庭も増えているとみられる。

 再婚が子どもに与える影響は大きい。未成年時に親の別居・離婚を経験した人への法務省の調査(21年)では、同居する親が再婚した時の気持ち(複数回答)は「新しい生活環境になじめなかった」が34%。「親をとられたような気がした」(17%)、「再婚相手と合わなかった」(15%)も多かった。

 大阪府内の高校で長年養護教諭を務める女性(58)は「親が再婚し、『自分は置き去りにされている』と感じる子どもは少なくない」と明かす。新たな親子関係、生活習慣やしつけの違いなどにも悩み、心身に不調も表れる。それでも子どもは「親が幸せなら」と我慢するという。

 「友達や祖父母がいても、やはり彼らにとって最後の砦(とりで)は実親。『再婚しても、子どもが一番大切であることは変わらない』と言葉にしてあげてほしい」と願う。

「お父さん」と言ってくれない

 一方、親の立場になる大人も悩んでいる。支援団体「ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン(SAJ)」(仙台市)には、「『お父さん』と言ってくれない」「親子関係をうまく作れない」「上手に叱れない」といった相談が寄せられる。

 代表の緒倉珠巳さん(53)は、異なる歴史を持つ親子と継親が、ひとつの家族になっていくには迷いや困難が伴うのは当たり前として、関係の育み方を地域で学べる講座などが必要だと訴える。「親になろうと頑張り過ぎると、うまくいかない。思い描く『普通の家族』に縛られないで」

     ◎  福岡県の高等専門学校3年の男子生徒(18)が、隆さん(42)に初めて会ったのは10歳の春。母親の絵理さん(41)と3人で遊ぶようになると、年の離れた友人のように感じ、「たかし」と呼んだ。

仲の良い家族を持ちたい

 3か月後。2人が結婚した時はうれしくて、「おめでとう」と伝えた。2歳の時に両親が離婚して以来、心のどこかでずっと、「お父さんがほしい」と思っていた。

 隆さん自身も再婚家庭で育ち、継父がそうだったように、「陽紀を大切にしよう」と誓った。当時、男子生徒らは祖父母の家で暮らしていたが、転校せずにすむように隆さんが移り住み、3世代同居は5年続いた。

 今は弟(7)を含めて4人でにぎやかに過ごす。ゲームに熱中していると隆さんによく叱られるが、絵理さんに「それだけあなたに真剣だからなんよ」と言われると、納得もいく。

 リビングでくつろいでいる時にふと思う。「僕も将来、こんな仲の良い家族を持ちたい」 (年齢などは2023年2月の新聞掲載当時の情報)  ※この記事は読売新聞が制作し、Yahoo!ニュースが企画したテーマに参加したものになります。

2年前