「共同親権」と「夫婦別姓」の根っこは同じ共同親権が導入へ = そもそも何?なぜ議論は紛糾?今後の課題は?

メリット・デメリットで人権問題を考えるよくない記事です。

https://www.theheadline.jp/articles/821

公開日 2023年04月28日 22:39,

更新日 2023年04月28日 22:40,

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この記事のまとめ

共同親権導入、これまでの議論と今後の課題は?

⏩ 単独親権制度を理由とする「子どもの連れ去り」が問題に
⏩ 導入をめぐる議論と、導入を前提にした政治的な動きが並行し、意見集約が困難に
⏩ 法制化に向けては、親権の内容や行使方法、第三者介入の制度設計が課題か

2023年4月18日、法制審議会家族法制部会は、民法改正案作成に際し、離婚後の父母双方に親権を認める共同親権を導入する方向性で議論することに合意した

現行の単独親権の維持から共同親権を導入することに慎重な意見もあった中で、共同親権導入について賛成する意見が多数みられたことから、今後は共同親権導入に向けた議論を行うことで意見がまとまったとされている。

日本における共同親権導入に関する議論は、2011年における民法改正時に示唆されたことに端を発しており、今回の合意に至るまで約10年の時間がかかっている形だ。

なぜ共同親権導入に向けた議論に時間がかかったのだろうか?また、法制化に向けて残っている課題とはなんだろうか?共同親権に関わるこれまでの議論や背景について見ていこう。

共同親権とは

共同親権とは、離婚後の父と母の双方に親権を認める制度を意味する。親権は2つの権利で構成され、まず子の世話をする身上監護権、そして子どもの財産を管理する権利義務である財産管理権が含まれていると解されている。

身上監護権とは、子どもを監護・教育する権利・義務を指し(民法820条)、子どもの住む場所を指定できる居住指定権(民法821条)・子どものしつけを認める懲戒権(民法822条)・子どもが働くことを許可する職業許可権(民法823条)の3つの権利・義務が含まれていると解されている。

また財産管理権とは、子どもの財産を管理し、子どもの財産に関する法律行為について代理する権利・義務を指し(民法824条)、具体的には賃貸借契約や携帯電話の契約を結ぶ際に、法定代理人として子どもを代理して契約を締結または同意することを意味する。

離婚後の父母に対して単独親権を規定

日本の法制度は、両親が婚姻中にある場合は共同親権を、両親が離婚した場合は単独親権を採用している(民法818条3項)。

単独親権とは、母親または父親のいずれか一方のみを親権者として設定し、親権を行使することを意味する。父母が離婚する場合は必ず親権者を定めなければならず、協議離婚や調停離婚をする場合は父母の協議によって、裁判離婚をする場合は裁判所によって、親権者は決定される。

子どもの連れ去りが問題に

共同親権の導入が議題に挙がったきっかけは、2011年の民法改正時における国会附帯決議で共同親権の法制化が示唆されたことにある。2011年に親権制度の一部を見直す民法の改正が行われた際、今日の家族を取り巻く状況を踏まえて、離婚後の共同親権や共同監護を含めて、親権制度は検討されると明記された。

その後これをきっかけに、政府は法務省および外務省において諸外国の親権制度の調査研究を実施し、2018年には法務省の担当者を含む家族法研究会において離婚後共同親権制度導入の可否について議論を行った。そして、法制審議会総会第189回会議で提起された諮問に対応する形で、2021年3月に法制審議会家族法制部会を設置し、離婚及びこれに関連する制度の見直しの検討を進めてきた。

上記の共同親権導入に向けた政府の動きの背景には共同親権の導入が示唆された背景には、離婚時に子どもの親権をめぐって父母間の紛争が悪化した結果、一方の親の了承を得ずに子どもを自分の管理下に置く子どもの連れ去りが国内外で問題視されていることが挙げられる。

実際に、日本ではこれまで子どもの連れ去りの違法性に関する裁判例が存在する他、日本政府が子どもの連れ去りを防ぐ法整備を行わないことは憲法に違反するとして、子どもの連れ去り被害に遭った当事者団体による国家賠償請求訴訟が提起されている。

国連などからの要望も

また海外の動きとして、国連や欧州議会、オーストラリア政府は日本政府に対し、共同親権を認める法改正を促す勧告を発表している。

国連の子どもの権利委員会(CRC)は2019年2月、日本の第4回・第5回政府報告に関する総括所見において、外国籍の親も含めた児童の共同養育がかなう離婚後の親子関係を規定する法改正を進めるよう日本政府に勧告した。

また、2020年7月8日、欧州議会本会議は日本における子の連れ去りに関する決議を採択し、日本政府が子の連れ去り案件に対して国際規約(ハーグ条約:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を遵守していないことについて、欧州議会は遺憾を示した上で、日本政府が共同親権の可能性に向けて国内法を改正するよう求めた。

そしてオーストラリア政府は2023年3月、日本政府に対して共同親権制度を促す意見書を日本法務省に提出した。この背景には、日本とオーストラリア間のカップルで子どもの連れ去りが多発していることが挙げられている。

このように、日本の単独親権制度を原因とした子どもの連れ去りトラブルに対する国内外からの非難が、共同親権導入の背景として存在している。

共同親権のメリットとデメリット

共同親権導入をめぐっては、賛否が分かれる状況にある。その背景には、共同親権の導入によってかなえられる長所と短所が、どちらも子どもの利益に関わっているということが挙げられる。そこで、共同親権のメリットとデメリットについて見ていこう。

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